関係者コメントの記録「人間文化研究機構国立歴史民俗博物館 川崎市市民ミュージアム被災収蔵品救済報告」

レスキュー内容

国立文化財機構よりご連絡いただき、2019年10月28日に初めて現場に入りました。その後、古文書(第3収蔵庫)の救出・乾燥・応急処置に関する作業検討と実践についてお手伝いさせていただいています。収蔵庫から救出された資料の処置については、乾燥やクリーニングなどに多くの時間を要しますので、参加者に作業工程を共有するためのワークショップも開催し、応急処置を効果的に進めるための模索を続けています。

レスキューで感じたこと

数万点の被災収蔵古文書を収蔵庫から搬出し、乾燥を始めとする一連の対応を検討するということは、これまでの事例とは違った様々な困難があり、現在も神奈川県博物館協会や協力者と連携して検討を続けています。腐敗・劣化が進行する資料の処置を支援団体職員と連携して対応するための作業工程をどのように設定すべきか、大きなチャレンジであると感じました。また、応急処置の後に想定される修復作業に向けた検討も、早い段階から意識的に検討する必要があると考えています。

今後に望むこと

今回のような膨大な資料への対応は、全国各地の関連施設・団体との連携は不可欠です。特に感染症流行の影響下、人の移動が制限される状況で作業を進めていくためには、人材派遣に限定されない、機器の利用協力など遠隔地での相互協力を促す対応が求められるのかと思います。例えば、真空凍結乾燥装置も、特定の機関に全てを委ねるよりは、各地の保有機関に協力を依頼するなど、特定の機関に負担が集中しないよう、効果的な連携体制が必要になるのかもしれません。
また、今回の被害対応経過については、今後の資料保存を考える上で重要な課題が多く含まれていると思います。そのため、川崎市や市民ミュージアムとしての情報発信だけでなく、学術的観点からの検証・発信も必要かと思います。被災資料が適切な状態で保存・継承されることを最優先としつつも、今後の災害対策や資料保存全体の発展に向け、一連の経過に関する情報公開や科学的検証や救出工程の検討などの推進を望みます。

(掲載写真:古文書レスキューの様子)

国立歴史民俗博物館 天野真志 
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