館長近影

 2018年4月に館長に就任しました大野正勝と申します。
 川崎市市民ミュージアムは「都市と人間」を基本テーマに掲げる博物館と美術館の複合文化施設として1988年11月に開館。以来、過去を記憶し、現在を知り、未来を探り、市民に親しまれるミュージアムを目指して活動してまいりました。川崎の成り立ちと歩みについて考古、歴史、民俗などの豊富な資料で紹介するとともに、川崎ゆかりの美術作品のみならず、都市に集まる人々の刺激から生み出されたポスター、写真、漫画、映画、ビデオなど近現代の美術も紹介してまいりました。また、そうした活動を通じて収集された多彩な資料と独自性のある企画も当館の特色になっております。
 このように川崎市民の方々と歩んできた30年間ですが、あらためて地域と博物館活動というものを考えてみました。例えば昭和30年代の小さな集落の暮らしについて。当時の村には博物館などというものはありませんでしたが、地域での暮らしの様子やそこで使われていた生活用具、習慣など「物」と「事」は子どもの頃から多くの人たちが体験して知っていました。地域丸ごと生きた博物館だったとも言えるのですが、現代ではそうした時代と地域の「記憶」はずいぶんと失われてしまいました。
 博物館の展示を見たり普及事業を体験することによって、当時の暮らしのなかで使われていた「物」、あるいは人々が関わっていた「事」が少しずつ語り始め、その時代と地域社会のことなどが見る人の中に想起されてくることでしょう。そうしたことは、私たちのことを知り、考えるためにとても大切なことです。博物館は失われてしまうかも知れない地域の大切な「記憶」を語る資料を収集保存し、正しく後世に伝えていかなければなりません。博物館の活動は時代を経るごとに大切なものになってきているのです。私たち川崎市市民ミュージアムは、これまでの30年間の活動を貴重な財産としながら、地域の博物館としてこれからの活動を考えていきます。
 美術館・博物館を取り巻く環境は年を経るごとに厳しさを増しています。新しい考えやさまざまな工夫や応援団も必要になってくるでしょう。一年一年が貴重な時間になることでしょう。そうした環境にあって、川崎市市民ミュージアムは、遠い過去、近い過去、そして現代の多様な文化に触れ、新たな発見と交流を体験していただくことを通じて、一人でも多くの方々の心に寄り添うことができるような活動を目指していきたいと考えております。

2018年6月
川崎市市民ミュージアム
館長 大野正勝