関係者コメントの記録「国立民族学博物館 川崎市市民ミュージアムにおける民俗文化財のレスキュー活動について」

民俗文化財の保存を専門とする私は、収蔵庫からの民俗文化財の救出、応急処置、館内での一時保管の手順を整えるサポートをおこないました。同館民俗分野担当の定森裕太郎氏とともに、膨大な資料に大量に繁殖したカビの処理を効率よくおこないながら、確実に殺菌効果を得るための方法を具体化していきました。

具体的な方法は、多くの支援者の方とともに作業を進めながら考えましたが、「作業」と「考える」ことを同時進行していくことは、なかなか難しいことでした。一方で、私の横で粘り強く作業に取り組む定森氏の姿を見て、「結果としてなんとかなるかもしれない」という、根拠のない安心感のなか、作業を進めることができ、私にとっても貴重な経験となりました。その後、新型コロナウイルス感染症の蔓延でミュージアムを再訪することが叶わないままです。定森氏にメールを通じて助言する程度の対応にとどまり、十分なサポートができていません。
しかし、民俗文化財のレスキューは着実に進んでいっています。初夏ごろにはほとんどの民俗文化財を収蔵庫から運び出したという、うれしい報告をいただきました。定森氏をはじめ、川崎市市民ミュージアムの関係者の皆様は、大変な作業を着実に進めています。あらためて敬意を表したいと思います。

次なる課題は、救出した民俗文化財をどのように博物館の資料として活用するのかということではないでしょうか。これに関しては、東日本大震災で文化財レスキューされた民俗文化財の活用事例が少しずつ蓄積されています。今後もミュージアムの皆様と情報共有しながら、お手伝いができればと考えています。

(掲載写真:民具洗浄ワークショップの様子)


国立民族学博物館 日髙真吾 
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