関係者コメントの記録「国立西洋美術館」

初めての参加となった今回の救援活動では、紙資料レスキューの一環として、2021年11月から継続して行われている明治期の浮世絵版画の剥離作業を行いました。

作業場に到着し、じっとりと水を含んだ作品を初めて目にして、ところどころ溶けて包紙と本紙が互いに固着している様子を見た際は、思わず言葉を失いました。作業を進めるにつれ幾分ペースはあがったものの、結局一日で剥離が完了したのは3枚だけで、こうした作業を全収蔵作品に行い、処置を施していくのは、考えるだけでも気が遠くなるようです。だからこそ持続的かつ効率的に進めていくためには、外部からの協力が不可欠だと痛感しました。

またレスキュー活動の必要性、大変さを実感しつつ、浮世絵版画の驚くべき耐久性に深い感銘を受けたことも記しておきたいと思います。いずれの作品も程度の差はあれ破損や色移りなどを免れないものの、作品によっては元の姿に近い状態を保っているものもありました。表面の包紙を徐々に取り除いていくと、版画の色鮮やかさ、ほとんど滲むことのない瞭な線描が目に飛び込んできて、ほっとすると同時に、その頑強さに圧倒されました。

今回の経験を通じて、また川崎市市民ミュージアムでは、こうしたレスキュー活動が冊子や展示など様々な形で発信されていることを伺い、美術館の担う様々な役割について改めて考える機会となりました。今後も微力ながら、活動に参加していければと思います。

(掲載写真:剥離作業に使用している道具)

国立西洋美術館 浅野 菜緒子
https://www.nmwa.go.jp/jp/index.html