関係者コメントの記録「NPO法人文化財保存支援機構(NPO JCP)」

JCPの川崎市市民ミュージアムの被災収蔵品レスキュー活動は、国立文化財機構文化財防災ネットワーク推進室からの要請を受けて始まりました。法人設立以来文化財レスキューを活動目標のひとつに掲げながら、被災現場にアクセスしづらいという課題を抱えていましたが、推進室の協力団体となったことで速やかな活動につながったことは大きな進展でした。

JCPは文化財保存修復専門家会員約150名を擁しており、その分野も多岐に亘ります。今回は、中でも紙と洋画の専門家に支援が求められました。2019年12月初旬から今日まで(2020年12月時点)、延べで約500名の会員を投入しています。紙の専門家集団としては国宝修理装潢師連盟も参加しており、双方智恵を出し合っての活動となりました。

具体的には水浸しになった作品を額から外し、乾燥させて燻蒸、その後カビ払いを行うというものです。紙同士が固着した簿冊やグレイジングに接着したままになった作品などはあえて保湿し、技術者が時間をかけて剥がしを行うのですが、その間にもカビは増殖します。剥がしを優先するかカビを抑えるか、悩ましい選択でした。冷凍という方法も知られていますが、冷凍により変質する材料もあるので注意が必要です。今回JCPなど修復技術者が常駐できたことは、そうした判断を行う上で大きな力になったと思います。

多くの団体が参加する活動は、受け入れる側がとても大変です。各団体の特性を活かすよう最大限の工夫と努力をされた川崎市市民ミュージアムには敬意を覚えます。今回の事例では活動の調整やレスキュー技術において、多大な知見が蓄積されたものと思います。気候変動で災害が起き易くなっている昨今、この被災経験をプラスに転じるべく、今後これらの情報が整理され、公開されていくことを望みます。

(掲載写真:カビ払いの様子)

NPO法人文化財保存支援機構(NPO JCP)
事務局長 八木三香 
https://www.jcpnpo.org/