2016年10月20日

現地見学研修『コアレックス三栄(株)東京工場』

9月28日(木)朝からの雨も上がった午後1時、都市が抱える環境問題の解決例として、トイレット・ペーパー(以降TP)再生メーカーを訪問しました。15名(ボランティア13名、インターン学生1名、職員1名)が参加しました。

 

川崎駅からバスで30分、川崎区水江町に川崎エコタウン工業団地があります。バスは工場地帯に入り、JFEの看板が度々目をよぎりました。恥かしながら、車中で隣席した初対面の川崎市職員の辻さんに「JFEってどこが主体ですか?」と伺ったところ、「日本鋼管です」と応えられました。私には新入社員当時の顧客、日本鋼管を訪問した時の景色が浮かびました。

 

現地見学研修『コアレックス三栄(株)東京工場』
 

 

バスを下車し、工業団地内エコタウン会館へ。辻さんから「川崎エコタウンにおける資源エネルギー循環の取り組み」について拝聴しました。

 

話しによれば、川崎市の人口は5月時点で148万人。主要産業は製造業(鉄鋼・電気通信・機械)、情報サービス業で、近年に入り環境・福祉・ライフサイエンス等の発展産業が増加しています。人口増は政令指定都市中ではこの10年で一番の伸びで、特に若い世代が増え、他都市より若い元気な都市となっているとのことでした。

 

「川崎エコタウンにおける資源エネルギー循環の取り組み」について拝聴
 

 

グローバル企業やエネルギー系企業に加えて、研究開発機関が400ヶ所に及んでおり、この状況が近年川崎市のイメージチェンジになっているそうです。例として、新川崎に想像の森K2タウンキャンパス(慶大・企業の最新先端技術開発)、殿町3丁目地区にキングスカイフロント(医療系機関による最先端技術開発)等を挙げていました。

 

川崎の環境復活は、事業者・市民・行政の三者による対策・実施努力で成し遂げられたそうです。背景として国のエコタウン事業に基づく、ゼロ・エミッション構想があったとのこと。

 

ところでゼロ・エミッションをネットで調べると、「異業種の連携により,ある産業では廃棄物となるものを,別の産業で原料として使い、廃棄物を社会全体で利用し尽くそうとするもの。国連大学が提唱した。」と記述されています。
既存の臨海工業地帯をエコタウン化した川崎市と、更地にエコタウンを開発した北九州市が共にエコタウン第一号で、この対称的な両者を視察に訪れる海外都市・団体の頻度が高いそうです。
最後に、川崎市エコタウン構想の紹介がありました。

 

プレゼンテ―ション終了後、ボランティアの島谷さんが、公害裁判の頃「環境は有限だ」という理念が底流にあったが・・と言及されていました。

 

次にコアレックス三栄㈱東京工場に移動しました。本社は総合エンジニアリング機械メーカーで、紙パルプ機械の自動化や省力化を主な業務としています。

 

会場でのユーモアに溢れる説明はコアレックス三栄の石井さん
 

 

会場でのユーモアに溢れる説明はコアレックス三栄の石井さん。同社は製紙業の多い富士市に立地し、公害をまき散らした時代もあったようです。東京工場では、TPを製造。原料は古紙、原料の半分は段ボールに入ったハードカバー付文書ファイイルで、古紙・金具・ホチキス針・クリップ等が含まれる機密文書類。これらを自動分別し、古紙類は繊維に分解後→TPになります。

 

分別された金属類はリサイクルへ→収入源に。プラスチックは燃やし、燃焼後の廃物はセメント工場へリサイクル。発生する熱は紙を乾燥させるドライヤーとして利用されるので熱を発生させるエネルギーが不要とのこと。最後に文書類用のインクは気泡に付着させすくい取り、工場内で焼却します。全く無駄のない仕組みとなっているのです。

 

処分に困る機密文書類も再利用をする時代になり、機密文書を処分したいとの要望が増えていること、金融機関・公官庁・企業が多い首都圏に近いこと、また下水の浄化処理水を海へ排水する前にこの水を利用できたこと等が川崎進出への理由だそうです。家庭ごみ1,000トン、機密文書が3,000トン、商用ごみと合わせ計6,000トン(月間)を処理し、一部は牛乳パックを購入し、上質TP用に混ぜているとの話でした。
さて、ここでTP1ロールに何個牛乳パックが必要か?とのクイズに、参加者から50、100、200、300枚等の声があがりました。正解5枚に感嘆の声。全製品の10%が自社ブランド、他は委託先ブランドでイオンのトップバリュー、マツモトキヨシ等。古紙から作るとTP上に黒い塵が見つかるが、価格上止むを得ないとのこと(大手TPはチップから作るので黒い塵は無い)。

 

質疑で、川崎市がミックス・ペーパーの受入可能な背景に当社の存在があったことが判り、参加者から横浜市より進んでいると評価・賛同の声が、特に女性陣から上がりました。また牛乳パックを個人持ち込みする場合は牛乳パック60枚をTP12ロールに交換出来ますよとの宣伝文句にまた女性陣が反応。

 

この後、工場内の見学になりました。1階の工程では、ヨーグルト容器や各種容器の破砕された直方体の塊、重さ1トン(5,000ロール分に相当)の塊が数多く積み重ねられていました。これが単位の塊だそうです。ベルトコンベヤーによって、段ボールや塊が円筒形水槽上部から落され、水が入り攪拌。予想外に大きな製造設備が並んでいました。

 

予想外に大きな製造設備
 

 

見学終了後、自社ブランドのTP 12ロールをいただきました。
川崎市役所の辻さん、コアレックス三栄㈱の皆様、有難うございました。

 

(博物館部門展示ガイドグループ 岡本)

 

*2014年3月までのボランティア活動の様子は、こちらでご覧いただけます。

http://ameblo.jp/kawasakimuseum2010/