2016年09月08日

企画展『描く!』マンガ展の内覧会に参加して

8月20日(土)に企画展『描く!』マンガ展(会期7月23日(土)~9月25日(日))の内覧会に参加しました。ボランティア参加者は4名。展示解説は磯山学芸員です。

 

この企画展は、現在活躍しているマンガ家8名の原画等の展示を中心に各マンガ家の描線・コマ・キャラクター造形等の「画技」の特徴に迫る展覧会です。各マンガ家の「画技」を解説するのは、自身もマンガ家として活躍している田中圭一さんです。

 

展覧会の第一章は、日本マンガ界の基礎を形成した手塚治虫先生と手塚さんに影響を受けた石ノ森章太郎先生、水野英子先生、赤塚不二夫先生、藤子不二雄Ⓐ先生4名のマンガ家のデビュー前後の作品を展示しています。また、手塚先生に影響を与えたマンガの資料も展示しているので、この章は日本マンガの源流を知る展示と言えるでしょう。

 

日本マンガの源流を知る展示
 

 

第二章は個性豊かな8名のマンガ家の原画等を展示しています。
1人目は、さいとう・たかを先生です。先生の特徴は線の太さにメリハリを効かせた線描写で、特にアクションの場面ではスピード感のある画面を生み出しています。

 

個性豊かな8名のマンガ家の原画等を展示
 

 

2人目は竹宮惠子先生です。展示室には『風と木の詩』の下書きを書いたノートがあり、セルジュが熱を出し倒れるところをジルベールが受け止めるあの有名な場面の描写にとても興奮しました。また、先生は京都精華大学の学長で、最近では、精巧な複製原画を制作するプロジェクトの陣頭指揮をとっており、その複製原画も展示されています。この技術があれば、海外でもマンガを主題にした展覧会を開催することが可能と思いました。

 

3人目は陸奥A子先生です。先生の特徴は柔らかな絵柄と等身大の女の子を描いた話が多いことです。そのため当時の女の子達から多くの支持を得ました。展示室には先生が手掛けた数多くの付録が展示されています。

 

4人目は諸星大二郎先生です。恐ろし気な雰囲気を持った絵柄に加え、コマ割りは簡潔で、派手な効果はありません。淡々とした感じが更に恐ろしい雰囲気を演出し、私はこの独特の世界観に惹きつけられました。

 

5人目は島本和彦先生です。先生の特徴は劇的な場面において背景に線の書きこみが多く見られること。加えて人物の表情を豊かに、そしてコマいっぱいに顔を描いています。このようなコマを連続させることによってさらに劇的な場面を演出しています。

 

6人目は平野耕太先生です。先生の特徴は細部まで描きこまれた背景と人体は、デザイン要素が強いです。ファンの間では独特の台詞回しが人気を博している理由の一つであるため、天井には『HELLSING』と『ドリフターズ』の二作品の有名な台詞を印刷したのぼりが展示されています。

 

天井には『HELLSING』と『ドリフターズ』の二作品の有名な台詞を印刷したのぼりが展示
 

 

7人目はあずまきよひこ先生です。先生の特徴は背景の風景は写実的であるのに対し、人物の顔のパーツは記号で表されている点です。『よつばと』を描く際に購入した品々とその各品々が出てくる場面のマンガが展示され、リアリティを追求しようとする姿勢に強く驚きました。また、原画の展示だからこそわかったことは、先生が描く上で苦手としていた右を向く人物を描く際にある工夫をしていたことです。それは初めに原稿の裏に左を向く人物を描き、次に原稿を表に戻し、原稿の紙は薄いため裏に描いた絵をそのままなぞることが可能で、この方法で右を向く人物を描いていたことを知りました。

 

8人目はPEACH-PIT先生です。私は、えばら渋子さんと千道万理さんの創作ユニットで作品を描かれていることをこの展覧会で初めて知りました。また、両者が持つそれぞれの強みを活かし、作画作業を部分的に分けて行っており、その様子は展示室内にある映像資料で見ることができます。

 

最後の第三章では、マンガを描くことを学ぶということや、自身が書いたイラストを発表する場の広がり等、最近の「描く」活動の場の広がりを紹介しています。

 

また、この展覧会は鑑賞するだけではなく、体験も充実しています。展示室入り口前には絵が入った紙と様々な色のペンが用意され、彩色体験ができます。また、パソコンを用いてマンガ制作を体験できるコーナーもあり、題名通り「描く」ことに重きを置いた展覧会でした。

 

パソコンを用いてマンガ制作を体験できるコーナー
 

 

市民ミュージアムはマンガを収集しているため、3階のライブラリーにはマンガの蔵書もあり、私が確認しただけでもこの展覧会で作品を出品されていた諸星大二郎先生と陸奥A子先生の作品がありました。併せて3階のライブラリーに寄ることをおすすめします。

 

私は普段、マンガを読む方ではありませんでしたが、この展覧会を通してマンガに対しての興味が高くなりました。私は、まだボランティアの駆け出しですが、市民ミュージアムがマンガ以外にどのようなものを収蔵対象にしているかを理解し調べ、展示ガイドボランティアとして、来館者に市民ミュージアムの特色を伝えられる様にしようと思いました。

 

(展示ガイド(美術館部門)グループ 後藤)

 

*2014年3月までのボランティア活動の様子は、こちらでご覧いただけます。

http://ameblo.jp/kawasakimuseum2010/