2016年08月07日

『二ヶ領用水を歩く』(コース➃ 武蔵小杉~鹿島田)

2016年7月18日(月)海の日。「二ヶ領用水を歩く」の現地見学研修です。
雨で順延しましたが、この日は朝から夏の日差しに照らされました。

 

今回は、JR武蔵小杉駅から鹿島田駅までの約7kmの距離です。二ヶ領用水に並行するように府中街道が走っています。

 

(9:00AM)武蔵小杉駅集合そして出発

 

武蔵小杉駅集合そして出発
 

 

みなさん、時間までに全員集合。
案内人の青木さんより本日の見どころの資料が配布され、コースについて説明がありました。どうやってここまで調べたのかと思ってしまうくらい興味深い考察や歴史的背景といった詳細な内容が多く含まれていて、青木さんの川崎を愛する気持ちがひしひしと伝わってきます。またメンバーの近藤さんからは、昭和12年当時と現在の地図も配布されました。まだ田園が多かった過去の地形を想像して現在と比較しながらの楽しいツアーがスタートです。

 

(9:17AM)八百八橋
武蔵小杉駅前にいきなり遺構が現れました。八百八橋(はっぴゃくやばし)碑です。1770年代に、上丸子村の干鰯商(ほしかしょう)の野村文左衛門が私財を投じて、木橋や土橋をより堅牢な石橋に替えました。文左衛門は当初人々のために1,000の橋を架けると目標を立て、結果としては1000には満たなかったようですが、その功績を讃えて、後年に「八百八橋」と呼ばれるようになったとのことです。

 

八百八橋(はっぴゃくやばし)碑
 

 

すぐ近くにある中原区役所にもその石橋遺構を実際に見ることができます。文左衛門の強い意志で架けられた橋で、昔の人々はどれだけ安心して行き来できたのだろうと思いを馳せました。

 

(9:30AM)渋川
中原区役所すぐに二ヶ領用水から分流される渋川があります。今は、この地域は川沿いに住吉桜が約250本ある桜の名所でもありますが、当時は、住吉・日吉地区の農業を目的とした用水路だったようです。また、江戸時代には、水車が複数建てられ、精米や製粉が行われていたようです。
この場所からは、平和公園まで、堰(せき)跡を辿ってゆっくりと1時間ほどかけて歩きました。武蔵小杉から鹿島田方面に向かって、中丸子堰、上平間堰、苅宿堰と続いています。
堰とは何かご存知でしょうか?
流れをせき止めすることで、水を貯留したり、分流を行ったりするためのものです。大きくなったものがダムと思っていただければ理解いただけると思います。現在はその痕跡がないため、想像するのみです。

 

川崎市平和館
 

 

川崎市は軍需工場や多くの重化学工業の工場が建設され工業地帯として発展してきましたが、第二次世界大戦では壊滅的な被害を受けました。この中原区近辺も同様です。昭和50年に「平和」をテーマとした施設として設置されました。戦争だけでなく、暴力、差別、貧困、環境破壊といった様々な問題を我々に問いかけるテーマ館です。
1時間半ほどの炎天下での徒歩で火照った体を冷ますちょうど良い休憩地にもなりました。熱中症にならないようにしっかり水分補給です。

 

(11:10AM)鹿島田堰から鹿島田橋
当時の面影も少なくなっている中で、地図とにらめっこしながら、過去に堀や堰があったであろう場所を想像しながら歩いていきました。くねくねしている道路があると、そこはきっと以前は用水だった可能性があります。想像しているだけでワクワクしてきます。
住宅地の多いところを歩いてきましたが、二ヶ領用水沿いでは、住民が植えたであろう、ほおずき、朝顔、ゴーヤ等が、夏の暑さの中にも少し涼しげな雰囲気で我々を迎えてくれました。

 

(11:30AM)最後は大師堀と町田堀の分岐点から鹿島田駅へ
暑さのせいでだいぶ体力を奪われている感じはしましたが、みなさん大変元気です。知らないことを知るという好奇心旺盛な方々ばかりなので、最後まで足取り軽く歩いてきました。
現在は浄水場から配水場としてその機能を縮小した平間配水場ですが、昭和12年から昭和49年までは、臨海部の工業地帯に工業用水を供給していました。近くに「わが国最初の工業用水」の立札を見て取れます。

 

大師堀に沿って進む
 

 

最後は大師堀に沿って進んでいくのですが、ほとんどが暗渠となり、当時の面影を拾いながら想像を膨らませてきた我々としては、見ることができないもどかしさも感じながら今回の実地見学研修を終えました。

 

私自身は「二ヶ領用水を歩く」は2回目の参加でしたが、普段見過ごしてしまうものが、こうやって一部でも残っている、そのちょっとしたものが、過去を思い浮かべると、地域の人の努力の蓄積があって成し遂げられたもの、建てられたものであることが多くあります。自分たちが生きている時代もそうですが、過去の遺産も合わせて今後に伝承していきたいと強く感じた一日でした。

 

参加したみなさんお疲れ様でした!
 

 

参加したみなさんお疲れ様でした!

 

(博物館部門展示ガイドグループ 佐藤 肇)

 

*2014年3月までのボランティア活動の様子は、こちらでご覧いただけます。

http://ameblo.jp/kawasakimuseum2010/