2015年12月08日

企画展『古鏡−その神秘の力−』内覧会

企画展「古鏡−その神秘の力−」(会期:10月10日(土)~11月23日(月・祝))が開催され、ミュージアムボランティア(及び友の会)を対象として、内覧会(新井学芸員による展示解説)が10月24日(土)に行われました。

 

内覧会(新井学芸員による展示解説)

 

古鏡(古代の鏡)の製作は中国において紀元前二千年紀にはじまりました。日本には3世紀に伝わり、やがて古鏡は日本でも作られるようになりました。
今回の企画展では、中国でつくられた初期の鏡から、日本で明治時代に作られた鏡まで、数千年にわたる数々の鏡が系統的に展示されていました。いわば古鏡の集大成といえる企画展でした。

 

この展示解説に関し印象に残った事項を紹介します。

 

1 鏡とはなにか プロローグ
このコーナーで一番目に展示されているのは白山古墳(幸区の夢見ケ崎動物公園の近くにありました。現在は削り取られて原形はありません)から出土した鏡、三角縁神獣鏡(当初復元)です。主成分は錫が20%強、銅が80%弱です。一般的に古鏡は、ほぼこの比率です。(古墳時代の鏡は)姿見以外に、太陽の反射、光を反射する特別なものとみられ呪術的に儀式、権威の象徴として使われました。また道士が仙人になるための修行にこの鏡を持参して、化けものに出会ってもこの鏡に映すことにより真の姿が現れ災難をまぬがれる、というように使われました。

 

鏡とはなにか プロローグ

 

二つ目の鏡は中国で出土した鏡です。今から3200年ほど前に作られたものです。人物が二人、男女のように見えます。そうだとすると陰陽という中国思想を表した初期のものの可能性があります。
三つ目は、日本製で文字の刻銘がある鏡としては最古のものです。鏡の縁に「夫、火、竟」と刻銘されています。夫は失で(遷都の)センと読み火を遷す鏡と解釈できます。鏡が太陽のように考えられ、鏡自体が神器として扱われていました。

 

2 漢の鏡
このコーナーには、円弧を並べた連弧紋、逆S字形の龍を示す虺龍紋(かりゅうもん)の鏡、玄武・青龍・百虎・朱雀を配した四神鏡、西王母および東王父の像などをレリーフ状に描いた画像鏡などがありました。特にここに展示されている神人竜虎画像鏡といわれる鏡は、「建初八年」(西暦83年)という年号が刻銘されているもので、これが発見された結果、画像鏡および東王父の出現の年代を従前より25年早めたという貴重な鏡です。

 

3 呉の鏡、魏の鏡、三角縁神獣鏡
西王母および東王父に加え伯牙(ハクガ:琴を弾く)の三神仙の鏡があります。これは紀年銘をもつ神獣鏡としては最古のものです。魏の鏡のなかには虺龍紋という古い形式を採用した鏡もありました。

 

呉の鏡、魏の鏡、三角縁神獣鏡

 

4 倭の鏡
このコーナーには7つの鏡が展示されていました。宮内庁書稜部所蔵ですがこれだけの(日本の最高傑作の)鏡を展示するのは戦後はじめてのことです。日本で作られた鏡は中国で作られた鏡を模倣したもので、中国の思想を理解していない状態で作られています。例えば玄武の位置(方位を示す)が逆になっていたり、十二支の文字がきちんと真似られていなかったりすることです。ただし、鋳造はよくできています。大きさも中国製では最大径20cm程度であったものが日本では40cmを超える鏡があります。ここに展示してある一つは日本で2番目に大きな鏡で、重さも6Kgあります。

 

5 ムラの鏡、古墳の鏡
このコーナーにある40点のうち、白山古墳出土の鏡が5面展示されていました。埋葬者の棺の大きさに対応して鏡も大きくなっています。すなわち、身分の高い人には大きな鏡が対応しています。

 

6 鏡の向こう側 エピローグ
日本に鏡が伝わって、はじめは、いわゆる姿見としては使われていません。姿見としての鏡は平安時代になってから(化粧道具として)使われました。
また平安時代になると和鏡が作られるようになります。女性がその鏡に自分の姿を移し込み、それを女人禁制の霊場に身代わりとして奉納したといわれています。

 

以上、1から6まで解説を聴いて、古鏡という一つの項目といえども奥が非常に深いことがよくわかりました。また、本企画展のサブタイトルである「その神秘の力」を少し感じとることができました。

 

ミュージアムボランティアによる「博物館展示室みどころガイド」にて、古鏡(レプリカ)を手に取る体験ができます。(毎月第2・4日曜日 13:30~、14:30~)

 

古鏡(レプリカ)を手に取る体験

 

今回の知識を得たことにより、このガイドで、より的確な対応ができるようになりました。関係者の皆さま、ありがとうございました。

 

(博物館部門展示ガイドグループ 熊崎)

 

*2014年3月までのボランティア活動の様子は、こちらでご覧いただけます。

http://ameblo.jp/kawasakimuseum2010/