2015年08月28日

逍遥展示空間ならびに常設展示作品解説(美術館部門展示ガイドグループ)

7月26日(日)15:30より約1時間、濱崎学芸員による常設展示作品のガイドツアーがありました。
このガイドツアーは、美術館部門展示ガイドグループの新規対象者研修として企画されました。私を含む新人5人と既存メンバー6人ならびにミュージアム職員鈴木さんが参加しました。

 

まず「逍遥空間について」からです。
逍遥空間とはミュージアムの中央にある1階から3階までの吹き抜けの高さ25メートルにも及ぶ、大きな空間のことです。
逍遥とは「気ままにぶらぶら歩く」あるいは「散策する」の意味です。 気ままに歩いて、オブジェを見てはいろいろ考えを巡らせる空間ということになります。
床は整然とした幾何学模様ですが、多摩川の水面をイメージして造られたとのことで、見る角度あるいは見る時刻による光の反射の違いによってそのような感じにも見えます。

 

逍遥空間とは
逍遥空間とは

 

川崎市市民ミュージアムは1988年11月1日オープンですが、開館にあたり、記念オブジェ作成の募集があり、結果7人のアーティストが選ばれ、その方々の作品が設置されました。
その後もう一つオブジェが追加になり、現在8つのアートオブジェが逍遥空間内あるいはその入口に配置されています。

 

2階博物館展示室前の渡辺豊重(わたなべ とよしげ)作のオブジェは 「日・月・鳥・花・人」(ひ・つき・とり・はな・ひと)がタイトルです。
白を基調とした大きな厚い板壁様のオブジェを中心に、その周りに鳥や火にも 見えるいくつかの小さなオブジェを配した一群が作品になります。

 

2階アート展示室前には手塚治虫(てづか おさむ)作のオブジェがあります。
埴輪のような茶色の笑い顔がピラミッド状に積み重ねられたもので、タイトルは「笑い」になります。
笑いには楽しい笑いから含み笑いや苦笑い等々、いろいろな笑いがありますが このオブジェの埴輪顔も一つ一つ違いがあり、楽しめます。

 

ヒョウタンツギ
ヒョウタンツギ

 

また手塚治虫氏の漫画ストーリに脈絡なく時々出てくる「ヒョウタンツギ」が顔の一つとして埋め込まれています。来館にきた際には是非これを見て、笑ってもらえたらと思います。

 

1階、ミュージアムの中庭を背にして左奥に山口勝弘作の 「ビデオ彫刻『川崎』」があります。
近づいて見ると、中には7個のテレビ画面があり六郷川河口付近や川崎港の風景が映し出されています。
当初私はこれをオブジェとは思っておらず、ミュージアムの案内盤か何かと思っていたので、オブジェと聞いたときには、ちょっと驚きました。
このアートを長期にわたり維持するために、中のテレビは約10年に1回交換するそうです。
その時代時代でのハイテクが駆使されたアートは、維持管理方法も従来のアートの管理概念を変えるものですね。

 

その近くにディビッド・マック作のオブジェがあります。
いかにも重そうな鉄骨を二人の水着姿の女性が軽々と担いだもので、何ともありえない状況を示したオブジェです。タイトルは「ア・ナイスロケーション」です。
川崎のイメージは工業都市、その象徴である鉄骨と一方、もう一つの川崎のイメージとして若い人々が活気に満ちていること、この二つを融合させたものだそうです。二人の女性像は写真技術を用いたアートですが経年変化で画像が薄くなりつつあり、今後が心配です。

 

逍遥空間の正面にあるひときわ目立つ大きなオブジェは福田繁雄の作品です。
人が階段を上っていく構図、またその階段は逆さになった人で構成された不思議なオブジェです。
タイトルは「2001・2002・2003・・」です。

 

さらにその隣のオブジェは、細長い銀色の塔とその上にゾウリムシのような 形状の板があり、その下に振り子のようなものが、かたちどられています。
菊竹清文(きくたけきよゆき)作で、タイトルは「情報彫刻カノン」です。
このオブジェの周りを歩いてみると、何かに反応してオルゴールが鳴り出す仕掛けになっています。

 

「情報彫刻カノン」菊竹清文作
「情報彫刻カノン」菊竹清文作

 

ミュージアムの中庭を背にして左側の壁面10m四方にはジョン・デイビス作のオブジェが壁に張り付いています。タイトルは「乾季」です。
川崎市はオーストラリアのウーロンゴンと姉妹都市ですがそれを記念して作成された作品とのことで、ウーロンゴンの乾いた自然を表しているように見えます。

 

中庭を背にして右側の出入り口のトンネル廊下を進んだ突き当り左側に川村易(かわむらおさむ)作の、タイトル「細胞都市モノリス」のオブジェがあります。
1辺が50cm位の立方体6個が組み合わされたものでそれぞれの立方体の一つの面はホログラムになっています。これを利用して制作された立体画像は、現代の工場や古代の遺跡、あるいは核戦争後の未来がイメージ化されています。

 

「細胞都市モノリス」川村易作
「細胞都市モノリス」川村易作

 

以上、逍遥空間とその内外にある8つのオブジェについて濱崎学芸員からの解説を基に紹介しました。
今回の解説は、これらのアート作品をより多角的に興味が持てる良い機会になりました。
濱崎さん、鈴木さん、美術館部門展示ガイドグループ新人対象研修の企画をしていただきどうもありがとうございました。

 

(美術館部門展示ガイドグループ 田辺)

 

*2014年3月までのボランティア活動の様子は、こちらでご覧いただけます。

http://ameblo.jp/kawasakimuseum2010/