2014年07月21日

ボランティア現地見学研修「二ヶ領用水を歩く」(上河原堰~向ヶ丘遊園駅)

6月21日(土)JR稲田堤駅に9時集合。ガイドはボランティアの青木さん、他にボランティア8名、ミュージアム職員2名が参加しました。
本日のコースはJR稲田堤駅 ⇒ 菅の渡し跡 ⇒ 上河原堰 ⇒ ニケ領用水上河原取水口 ⇒
三沢川との交差点 ⇒ ふだっこ橋と筏道 ⇒ 布田の草堰 ⇒ 中野島の草堰 ⇒ 大丸用水跡 ⇒
旧三沢川との合流点 ⇒ 一本入圦桶堰 ⇒ 紺屋前堰 ⇒ 台和橋 ⇒ 小泉橋・榎戸堰 ⇒ 榎戸の庚申
塔 ⇒ 五反田川との合流点 ⇒ 五ケ村堀 ⇒ 稲生橋 ⇒ 向ヶ丘遊園駅までの行程約6kmです。

当日は梅雨時の曇り空でしたが、かえって歩きやすく感じました。概要説明後、駅前の道を多摩川へ。昭和16年頃開通した府中街道から多摩川の土手までのこの通りは、桜見物のため観光道路と呼ばれていました。現在はJR稲田堤駅前の踏切に「観光道路踏切」との名を留めています。
多摩川土手近くに多摩川最後の渡し「菅渡船場跡」の碑があります。昭和48年に廃止されましたが、船頭小屋は生田緑地内の日本民家園に移築されています。

 

上河原堰上流の土手は、菅村の人々が明治31年に植えたという250本余りの桜を始まりとして、花見の名所「稲田堤の桜」となったところです。昭和初期に若き日の古賀政男が大学のマンドリンクラブ後輩と訪れて、名曲「丘を越えて」が生まれたと語り継がれています。多摩沿線道路拡幅工事のため、昭和48年に最後となった桜も切られてしまいました。

 

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川面に見える「中野島取水口」と言われる二ヶ領用水上河原堰には、昭和16年に平賀栄治が画期的な「浮き堰堤」を造りましたが、その後台風等で破損したため昭和46年に現在の堰が造られました。この付近では昭和初期から大戦前まで、「多摩川梨」のブランドで各地に出荷されるほど梨の栽培が盛んでした。

 

上河原堰のすぐ下流付近に三沢川水門があります。そして二ヶ領用水本川近くには、用水の一部を利用した稲田取水所(川崎市上下水道局)があります。日量20万トンの水を取水し、生田浄水場、道路下にある送水管、平間の配水所を経て、臨海部の工場に配水されています。これは「地下の二ヶ領用水」といえるのではと思いました。

 

新三沢川と立体交差しているところがあります。元々の三沢川はもっと下流で二ヶ領用水と合流していました。度々の氾濫により上が新三沢川、下が二ヶ領用水という構造の水路になりました。

 

布田には「ふだっこ橋」があり、この橋は筏道に通じています。筏道は多摩川上流の木材を江戸に輸送するため、筏職人が利用した河口付近より奥多摩方面に通る道です。筏流しは明治30年代に最盛期を迎えたのち大正末期に終わりを迎えました。
現在も利用されている布田堰は、直径10㎝ぐらいの丸太を数多く打ち込んだ乱杭堰が見られます。また中野島にある草堰からの用水は、中野島北部などに開かれた新田を潤しさらに登戸方面に流れています。

 

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右側に見える雑草で覆われた堀の跡は、昭和初期ぐらいまで菅地域で利用された大丸用水跡です。中野島中学校が左側に見える場所に用水と旧三沢川の合流点があります。二ヶ領用水は地域住民に親しまれるように整備されていて、台和橋までは板柵・竹柵・石組等を活用して工夫された特色ある護岸となっています。

 

取水口が一枚の大きな板だったことに由来する一本圦樋堰(草堰)は、登戸にある3つの堰の1つです。分水した用水は中野島から来た大丸用水と合流、現在は小田急鉄橋の多摩川下流に流れています。昭和25年にコンクリート堰になり、現在は用水の中に2個のコンクリート製取入口があります。

 

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紺屋橋はこの付近に用水を利用した藍染屋があったことに由来します。関東大震災で東京の染物屋が全滅し、染色の糊を洗い流すための大量の水を求めて登戸や溝口に移転してきました。

 

台和橋の欄干には、二ヶ領用水を開削した小泉次大夫のレリーフがはめ込まれています。この付近では、紙漉き業が江戸時代から始まり大正時代に最盛期を迎え、東京方面から原料の屑紙を仕入れて上品な桜紙等に再生していました。

 

世田谷町田線(現在の津久井道)の新川橋を越え、往時の津久井道に架かる榎戸橋(小泉橋)に到着。天保年間に架けられた石橋はすでになく、平成26年3月に完成したコンクリート製に変わっていました。この付近は津久井道と府中街道とが交差する場所で、昭和2年4月に小田急線とJR南武線(当時南武鉄道)が開業するまで繁盛していました。

 

小田急線を跨ぐ稲生跨線橋を越えると五反田川と合流、そして府中街道が高架で二ヶ領用水を跨ぐように流れています。また、五ケ村堀が暗渠となり遊歩道として整備され、暗渠になった五ケ村堀は宿河原用水と交差し多摩川の水門へと続いています。

 

五反田川は、東生田小学校付近から多摩川に直接放水する洪水対策の地下トンネル工事中で、平成30年度完成予定です。

 

小田急向ヶ丘遊園駅南口に11時30分に到着。本日の現地見学研修を終了しました。
案内人の青木さん、情報満載の資料とともにわかりやすい解説をしていただき有難うございました。参加した皆さん、本日は約9,500歩の行程でした。お疲れさまでした!!

 

(スクループログラムサポートグループ 近藤)

 

*2014年3月までのボランティア活動の様子は、こちらでご覧いただけます。

http://ameblo.jp/kawasakimuseum2010/