2022年11月09日

【教育普及】第56回かわさき市美術展関連企画オンラインセミナーを公開しました

川崎市の文化振興を目的に毎年開催している「かわさき市美術展」。今年度で56回を迎えます。作品の募集開始日(11/1)にあわせ、関連企画のオンラインセミナーの配信も始めました。今年度は「書」をテーマに2つのセミナー動画を配信します。

まず取り上げるのは「拓本」。聞いたことはあるけれどよく知らない…という方も少なくないかもしれませんね。版画とどう違うの? そもそもなぜ「書」に分類されるの? と疑問がフツフツと湧いてきます。でも、セミナーをみれば「なるほどー」と納得できるはず。是非ご視聴ください!

▲オンラインセミナーも3年目。撮影も慣れてきました

ところで「拓本」セミナーは、けっこう長めで40分近くあります(でもあっという間です)。しかし、これでも当初予定していた項目をいくつか削ったのです。泣く泣く削ったその項目を、せっかくなのでここで紹介いたします!

◆泣く泣く削った項目 その① 「乾拓(かんたく)」
水を使わずに拓本をとる方法。動画で紹介した水を使う方法(湿拓)と比べるとキレイにとるのは難しいですが、紙と墨(固形の墨)さえあればとることができるという利点があります。湿拓と同様に、凸の部分が黒色(墨色)になります。
◆泣く泣く削った項目 その② 「どんなものでも拓本にとれるの?」
これは先生への質問項目でした。動画内でも少し紹介していますが、「凹凸があるものなら、髪の毛1本でもとれる」とのこと。手が届けば大きい物も大丈夫。ただ、崖の上にある石碑などをとる時はちょっと怖いとか…。拓本をとるのも命がけなんです。先生、気を付けて作業なさってください!

▲「乾拓」はシンプルに紙と墨だけで ▲赤い墨でとった拓本も見せてもらいました

もうひとつのセミナーでは「古代文字」を取り上げています。こちらは未来の美術展応募者=小学生の皆さんも楽しめる内容になっています。漢字は難しい…と思っているお子さんもいらっしゃるかもしれませんが、漢字の先祖の古代文字は、実はとってもおおらかで自由。そしてすごく楽しい。ぜひ紙とペンやクレヨンを用意して、先生の話を聞きながら一緒に書いてみてください。でも歴史の長さと成り立ちの深さに、ちょっと気が遠くなりそう…(笑)。

▲もう撮ってますよ…ふたりとも夢中で書いてます

ところで講師の日野楠雄(ひのなんゆう)先生は、文房四宝(ぶんぼうしほう/墨、硯、筆、紙)の研究家でもあります。そこでセミナー収録後に、当館の学芸員が入手した墨を「鑑定」してもらいました。持ち主のN学芸員曰く、「乾隆帝時代のもの」だそう。うーん、本当?
先生は墨を優しくすって(力をいれてギーギーするのはNG)、宣紙(せんし)という中国製の手すき紙に墨をたらしたり、筆を走らせたり。そして気になる結果は…「濃淡も出ているし、いい墨。墨が線の端の方に流れているので、古い墨だろう」とのこと。いずれにせよ大事にすべし!ということで、その旨をN学芸員に報告したのでした。

▲硯は「風」の字の形をした「風字硯」 ▲すった墨で書いているのは「鳳」。かっこいい!

以上がセミナー収録の裏側でした。
かわさき市美術展は、作品応募者だけのものではありません。作品を作る人も、作りたいと思っている人も、作品をみる人も、みたいと思っている人も、いろんな方がそれぞれの関わり方で楽しむことができる。そんな美術展となるよう、これからも努めていきたいと思います。

教育普及 奈良本



セミナーページ:セミナー「拓本の魅力」
        セミナー「古代文字ってなんだろう」
市美展ページ :第56回 かわさき市美術展