被災から2年 ―いまここから見据える未来―

 川崎市市民ミュージアムは、令和元年東日本台風による被災から2年という節目を迎えました。
 川崎市の文化・芸術・社会などの歴史を刻んだ貴重な収蔵資料を救うため、被災直後から、個人・団体を問わず多くの外部関係者の方々からご支援・ご協力をいただき、今日まで被災資料のレスキュー活動を続けてまいりました。当館ではこうしたレスキュー活動を今後の文化財の保全と防災に役立てるため、その様子をウェブサイトにて広く公開してきました。また、被災2年に合わせ、10月31日(日)まで川崎市内の東海道かわさき宿交流館にて「救う過去、つなぐ未来―川崎市市民ミュージアム被災後活動報告展―」を開催しております。
 近年、世界的な異常気象の影響により自然災害が多発する傾向にあります。日本国内でも貴重な文化財や美術作品に大きな被害が及ぶようになりました。地域の文化財や博物館収蔵資料に被害が及ぶたび、レスキュー活動や修復活動、被災資料の今後の利活用に関することなども博物館が取り組む課題の一つになってきております。そのような状況のなかで発生したこの度の被災は、収蔵資料などに対する防災・減災対策が何よりも優先すべき事項であることを教えられるとともに、これまでの当館のあり方を省みる機会となりました。
 被災を乗り越え、当館がこれからも美術館・博物館として活動を継続して行くためには、収蔵資料と施設が被った事態を見据え、引き続き応急処置や修復を進めるとともに、被災資料が持つ意味とそれらの活用の意義というものを考えて行く必要があります。
 市民ミュージアムでは今後も、被災収蔵品の修復だけでなく、市民の皆様や地域社会に貢献できる博物館、美術館活動を継続してまいりたいと考えております。

 令和3年10月12日

川崎市市民ミュージアム館長・大野正勝

「救う過去、つなぐ未来―川崎市市民ミュージアム被災後活動報告展―」会場風景