関係者コメントの記録「東京大学史料編纂所史料保存技術室 写真作品のレスキューに活動について」

 川崎市市民ミュージアムの収蔵品の被災状況を知ったのは、国立台湾美術館で開催されていた写真保存に関するシンポジウム参加中のことでした。帰国後、既にレスキュー現場に入っている写真保存に関わる方々からの連絡を受け、被災から2週間が過ぎた2019年11月1日にレスキュー活動に加わりました。収蔵庫から引き上げられた写真プリントの乾燥作業を行うと同時に、文化財保存に関わる大学組織として「何が必要とされ、何が出来るか」を関係者の皆様とご相談させていただきました。
 その後は、日本大学の写真学科を拠点にして進められた、水損した写真プリントを台紙から分離する作業に、東京大学史料編纂所史料保存技術室から写真と紙本の技術専門職員4名が交代制で加わりました。この時、写真プリントの乾燥技術として用いたエア・ストリーム法は、大量の写真作品を短期間に応急処置しなければならない状況下で大変に有効でした。一方で、技法や状態の異なる写真作品に対して、最善の救済策をその場で判断していくことの難しさもレスキュー活動を通して実感しました。
 今後、こうした経験が写真分野以外の方々にも共有されることで、専門家でなくても緊急時の初動対応ができる体制が整えられることが期待されます。
(掲載写真:水損した写真プリントレスキューの様子 撮影:谷 昭佳)

東京大学史料編纂所 史料保存技術室 谷 昭佳

https://www.hi.u-tokyo.ac.jp/gijyutu/frtec.html