生命の表現力 山下清とその仲間たちの作品展

企画展示室1 / 2017年09月02日-2017年10月01日

山下清肖像
山下清 肖像(撮影:廣澤孝志)
石川謙二《運動会》クレパス/1939年
石川謙二《学園の風呂場》クレパス/1938年
沼祐一《ひと》貼絵/1940年
野田重博《花と虫のいろいろ》クレパス/1938年

踏むな 育てよ 水そそげ ───八幡学園標語



 今年、創立89年を迎える知的発達障害児入園施設「八幡学園」(1928年開園・千葉県市川市)は、「踏むな 育てよ 水そそげ」の指導理念のもと、心の触れ合いを通して一人ひとりの特性を見出してきました。山下清は、1934年(12歳)八幡学園に入園し、そこで貼絵に出会い、才能を開花させました。山下清をはじめ、八幡学園の仲間たちである石川謙二・沼祐一・野田重博は、それぞれに障害を抱えながらも「美」に対するたぐい稀なる「天性」を感じさせる作品を多数残しています。

 今回の作品展では、4人の作品100余点と合わせて山下清の放浪日記、習字、学園での思い出の写真なども公開します。数々の作品から、その表現のうちに込められた、生命の表現力の煌めきをぜひ感じていただければ幸いです。


 

山下清、そして八幡学園でともに育った仲間たち


――「 」内は早稲田大学心理学教室教授 戸川行男(1903-1992)「八幡学園の子供たちの作品を見て」より引用

◆貼絵の天才 山下清 / 1922-1971(享年49)

東京浅草に生まれる。1934年(12歳)「八幡学園」に入園、ここで貼絵に出会い、園児にやさしい環境のなかで制作に熱中する。6年半後(1940年)八幡学園を出奔。以後15年半に及ぶ放浪を続ける。1956年(34歳)放浪生活に終止符。学園生活の思い出や、放浪から学園に戻って思い出して描いた作品の展覧会を東京で開催。1971年、脳溢血が原因で49歳の生涯を終える。
貼絵制作にはげむ山下清
貼絵制作にはげむ山下清(12歳)/1934年

◆クレパス画の異才 石川謙二 / 1926-1952(享年26)

11歳のときに入園。右目はほとんど見えず、18歳頃には左目も視力減退。虚弱体質で、入園までは浮浪生活を送っていた。13歳の頃から、大判の画用紙に猛然とクレパス画を描き始め、かつて自分が住んでいた浅草の情景を再現していった。
――「浅草公園の子であり、街頭の浮浪児であった謙二君の絵は、常に人物が描き込まれる、人臭い表現です。」
石川謙二肖像 石川謙二「おわかれ」《おわかれ》クレパス/1939年



◆原紙芸術の風格 沼祐一 / 1925-1943(享年18)

10歳のときに他の施設より入園。衣服を裂いたり、時には爆発的に憤怒したりといった野性ぶりがあった。入園当時、誰も絵を描けるとは想像しなかったが、クレヨンや色紙をちぎって絵を描くようになる。
――「祐一君の絵には原紙芸術の風格があり、ある意味では清君以上の、その何倍かも不可思議であり、奇跡的でもあります。」
沼祐一肖像 沼祐一/どうぶつ《どうぶつ》貼絵/1941年



◆幼くして絵画的天分の持ち主 野田重博 / 1925-1945(享年20)

11歳のときに救護法該当児として入園。わずかに氏名を記入する程度で、ほとんど読み書きができなかった。重い障害を受けていながら、競争心が強く、クレヨン・クレパス・色紙と何でも使って絵を描いた。
――「彼の多くの絵は健康的な印象を与えます。知能の障害は一層激しいにもかかわらず、作品の多くに写実性を感じることは、今後の作品に大きな期待を寄せてもよいと思います。」
野田重博肖像 野田重博/潮干狩《潮干狩》クレパス/1938年

関連イベント

◆記念講演会「なぜ? どうして? ── 真実を求めた山下清」

山下清作品展を通して9年間行動を共にした松岡氏しか知らない山下清の素顔に迫ります。

日時:9月17日(日)14:00~15:30(13:30開場)
講師:松岡一衛(社会福祉法人 春濤会 八幡学園 理事)
1F映像ホール/定員270名(申込不要・先着順)/無料 ※観覧券(半券可)が必要



◆貼絵ワークショップ「あったらいいな、こんなチョウチョ」(要事前申込)

日時:9月3日(日)14:00~16:00(13:50開場)
講師:松田拓実(障害者造形教育研究指導員・八幡学園造形教室講師)
※申込先など詳細はイベントページをご覧ください。



◆連携特集上映〈アートへの情熱〉

連携上映として、さまざまなアーティストたちの情熱を描いた映画を特集します。

日時:9月2日(土)・3日(日)・9日(土)・10日(日)・23日(土・祝)・24日(日)・30日(土)、10月1日(日)各日11:30~/14:00~
※上映作品・スケジュール等、詳細は上映案内のページをご覧ください。



◆学芸員による展示解説

9月23日(土・祝)14:00~ / 無料 ※当日の観覧券が必要




生命の表現力 山下清とその仲間たちの作品展

会場
企画展示室1
期間
2017年09月02日-2017年10月01日
休館日
毎週月曜日(ただし9月18日は開館)、9月19日(火)
観覧料
一般 700円(560円)
学生・65歳以上 500円(400円)
中学生以下 無料
*( )内は20名以上の団体料金 *障害者手帳をお持ちの方およびその介護者は無料 *9月18日(月・祝)敬老の日は65歳以上無料
主催
川崎市市民ミュージアム/ 「八幡学園」山下清事業委員会
特記事項
同時開催の「ハイチアート展」の観覧券(半券)ご提示で100円割引となります。