Chapter3 スティルライフをみつける

 版画や印刷には、「原稿を作り他の支持体にイメージを写す、もしくは移す」「複製をする」「刷るという行為が繰り返し行われる」など、完成のために踏まなくてはならない工程があります。これらは、版画や印刷における独自の工程であり、作品を鑑賞するときに注目したいポイントと言えるでしょう。

 この工程は、私たちが日常や現代をどのように捉えるかということにおいても示唆に富んでいます。長田の作品を見るとき、複製や繰り返しは、モチーフとなったものや行為の意味や価値が揺らぐものとなり得るかもしれませんし、その場にゆったりと留まり続けるイメージに、反対に加速を求められるような現代のスピード感に思いを巡らすこともあるかもしれません。そして、私たちの生活や価値観に寄り添いながら、目の前にある風景をもう一度見回し、各々のスティルライフを見つけるきっかけとなってくれるのではないでしょうか。