長田奈緒 風景としてのスティルライフ
ごあいさつ

 川崎市市民ミュージアムでは、「長田奈緒 風景としてのスティルライフ」展を開催いたします。

 長田奈緒は、身のまわりのありふれたものの表層を、版画や印刷など複製技術を利用して別の素材にうつして作品を制作しています。さらに作品発表の際はそれらを床や窓、額縁の中などで再構成し、ものとそのありようをもう一度示す試みを行ってきました。その見た目はモチーフとなったものと大変よく似ていますが、わずかな違和感が私たちの目を惹きつけ、作品の前に立ち止まらずにはいられません。近年では「VOCA展2024」「第4回PATinKyoto」など美術館での展覧会に出品し、今後の活躍が期待される川崎市出身の作家です。

 展覧会タイトルの「スティルライフ」とは、日本語で「静物画」を意味します。静物画=テーブルの上に果物や花瓶などがある様子を描いた絵画、と思う方もいるのではないでしょうか。静物とは静止した自然物や人工物のことを指し、かつて画家たちは台の上などに花や果物、花瓶や布などを配し、各々の美的感性の追求としてそれらを描いたり、宗教的な教えや社会に向けたメッセージなどを込めて描いたりすることもありました。

 長田は本展のために、作品を川崎市内の施設や道端などに置いて撮影をしています。こうした準備を進めていく中で、オンライン展覧会では作品が画像に変換されていくことに着目し、作品が置かれた風景を切り取った画像を「スティルライフ」と呼ぶことができるのではないかと考えました。パソコンやスマートフォンの画面に並ぶ作品からは、作家の美意識や感性、一瞬だけ時が止まったような静けさも伝わってくるようです。作品を多角的に見ることは、私たちの感覚や記憶を喚起するきっかけとなり、日常生活に向ける視点にもささやかな変化をもたらしてくれるでしょう。

 本展を開催するにあたり、多大なるご協力をいただきました長田氏、その他関係各位に心よりお礼申し上げます。

2025(令和7)年9月1日
川崎市市民ミュージアム

各章の画像は一部を除き、クリックまたはタップすると拡大してご覧いただけます。

Chapter1 静物をみる
Chapter1 静物をみる
Chapter2 痕跡をみる
Chapter2 痕跡をみる
Chapter3 スティルライフをみつける
Chapter3 スティルライフをみつける
出品リスト/作家略歴/作家インタビュー
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