2016年12月14日

現地見学研修『二ヶ領用水を歩く コース2稲田堤~向ヶ丘遊園』

雨で一週間順延となった11月26日(土)、寒くはありましたが快晴に恵まれ、10名(鈴木職員を含む)がJR南武線稲田堤駅に9時集合しました。

 

快晴に恵まれ10名が集合
 

 

案内解説はいつも通りに青木さん。
名札と資料が配られ、まずは観光道を進み多摩川に向かいました。
岸からは、川を横切る京王線が左手に見えます。この辺りは戦前から桜の名所であり、都内からの観光客が訪れとてもにぎわったそうです。菅の渡しがあった場所には、「菅渡船場跡」の碑がありました。

 

この下流あたりに二ヶ領用水の上河原取水口があったとされています。現在はコンクリートの立派な堰堤で、伏流水をせき止めない透過堰提工という工法が採用されています。当日、堰堤には鵜や小群落の白サギが何羽も留まっており、水域は魚類資源に恵まれていることが感じられました。

 

二ヶ領用水本川に入る前に、大丸用水に関する解説がありました。菅村や中野島村では、田んぼに水を入れるには二ヶ領用水の水位が低かったので、大丸堰(稲城市)から取水した大丸用水を使用していたとのこと。

 

大丸用水に関する解説
 
大丸用水の水路
 

 

多摩川を離れ、土手を下ったあたりに大丸用水の水路が残っており、川幅1mほどの水路は金網で囲われていました。
住宅地沿いを進むと、梨畑が散見されます。多摩川梨として知られるこの辺りの果実は味がとても良いそうです。機会があれば一度賞味したいと思っています。

 

今回歩いた行程中、右手側の遠方には多摩丘陵が連なっていて、三沢川、旧三沢川、山下川が順次流れ下ります。三沢川との交差地点では大丸用水が流れ込みます。この先、草堰の先にも大丸用水の堀跡が見られました。

 

「ふだっこ橋」は筏道(いかだみち)に通じます。当時、江戸に年貢代わりの木材を献上するため、多摩川上流の木材は河口まで運ばれました。筏を組み、六郷・羽田まで下った筏師は、戻りは主に左岸(東京側)を歩いて引き返しましたが、川崎側から帰ることもがありました。筏師は河口付近の情報や文化を村々に持ち帰った伝播者でもあったのです。

 

乱杭堰(草堰)から先の護岸には多様な材料が見られました。乱杭と同じ形状の木材で岸を支える所から始まり、板柵護岸、竹柵護岸と移り、その先は自然石を積み上げた壁に変わります。この部分は丘陵からの水(旧三沢川)が流れ込むので強度を確保するために石材が使われていたそうです。

 

乱杭堰(草堰)
 

 

石造の古い(昭和3年造立)道標を過ぎたところに紺屋橋がありました。この辺りの大量の水を求めて、関東大震災後に東京から染物屋が移り住んだということです。また、紙漉き業も栄えたらしく、豊富な水を利用して多様な職人技が花開いたことを知りました。

 

さらに下ると、市内最古の石橋・小泉橋が見えます。天保15年に津久井道にかけられました。三軒茶屋から津久井へ至るこの往還は沿道の人々の生活を支える商業路であり、また、津久井・愛甲地方の生糸などがこの道を通って江戸に運ばれました。橋の名は土地の豪農・小泉利左衛門に由来します。

 

小田急線を陸橋で渡ると麻生区に水源をもつ五反田川が、飯室橋付近で合流しています。高架道路の下をのぞくと、旧水路が見え、ここから下流は拡張されたコンクリート護岸で、地上の府中街道と交差します。
まもなく向ヶ丘遊園駅に到着し、ここで本日の行程は終了となりました。
この先川崎区まで全長32mある二ヶ領用水の起点から、約6kmを歩いたことになります。
終了後は皆で近くの店で昼食。楽しく歓談し、おひらきとなりました。

 

青木さんの解説は大変わかりやすく、また、参加メンバーもそれぞれに幅広い知識を持ち、行程中に様々な話が聞けて、とても興味深い研修でした。終了後、「とても勉強になった!」といくつも声が上がっていました。個人的にはほぼ2年ぶりの参加でした。

 

澄んだ青空に、いちょうの黄葉が映え
 

 

晩秋の一日。澄んだ青空に、いちょうの黄葉が映え、水辺ではカモがえさをついばむ。水中には鯉やめだかの群れが穏やかに泳ぎ、少し離れた枝先にカワセミが飛来し、私たちの目を楽しませてくれました。
この美しい用水は、ここに住み、繋いできた人々が造り、育んできたものです。用水を通じて、縦横に文化が行き交い、地域の発展に広く寄与しているのです。

 

来年1月中旬から休館の為、私たちも一旦ボランティア活動を離れることになりますが、住民として、この貴重な地域の財産を守り、関わっていきたいとの思いを新たにしました。

 

(スクールプログラムサポートグループ 山村)

 

*2014年3月までのボランティア活動の様子は、こちらでご覧いただけます。

http://ameblo.jp/kawasakimuseum2010/