デイリー横山裕一の移行と、ミュージアムニュース79号テキスト
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さて、展覧会ラスト2日、さすがにかなりの来場者。
リアルNIWAです。
ミュージアムニュースVol.79、私の前説と横山裕一インタビューが載っているのですが、配布終了しました。
せっかくなのでテキスト全文掲載しておきます。
これから展覧会をつくる意気込みと、横山さんのパーソナリティーが、平明に語られていて、気にいっています。
(美術館 金澤韻)
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未来的な景観、スタイリッシュな人物たち、疾走感溢れるコマ展開―独特の表現で高い評価を得る漫画家・横山裕一。その作品世界は、もしかすると、通常のストーリーマンガを読みなれた方にとっては、最初は入り込みにくい感じがあるかもしれません。「でもいったん入り込むとハマりますよ」と語る金澤韻学芸員が、展覧会をより楽しんでいただくために、横山裕一作品との出会い、そしてその魅力を語ります。そして次ページでは、横山裕一さんのインタビューをお届けします。
―― 横山さんの「ニュー土木」を発売直後に読んだんです。これは普通じゃないと思いました。でも、眺めているだけで気持ちがよかった。線がとにかくカッコよくて。音を表す「ドドドド」「ズバー」みたいな文字が、異常な形とサイズで入ってて。普通じゃないんだけど、余計なものも足りないものもない・・・これは完璧な世界だと思いました。
それから何年か経って、横山さんのアトリエを訪ねる機会があったんです。作品にはどこか未来的なイメージがあるので、そういう未来的なアトリエなのかと思ったらまったく逆で、簡素な佇まいの平屋で、そこにはパソコンすらなかった。私は例の、横山さんの描く「ドドドド」みたいな音を表す文字について知りたくて、「どうしてあんな文字が描けるんですか」と尋ねたら「定規で描いているから」と(笑)。定規の直線性がまっすぐに出た「ドドドド」だったわけです。最近は漫画制作のソフトを使って描いている漫画家の方も多いですが、横山さんはすべて手作業。その日いただいた名刺にも驚きました。ボツ原稿の裏に手書きで書いていらして・・・プリミティブかつエコなんです。
他にアトリエで印象的だったのが、一つは友人との会話を録りためたカセットテープの山。それから、学研の図鑑。一緒に図鑑をめくっていたら、地球ができていく過程を描いた図がありました。雨が降って、川ができて、海に注ぐ…その時間の経過が描かれている。横山さんの世界だと思いました。カセットテープも、ご友人とコミュニケートする一瞬一瞬を楽しまれているのだと思う。時間を大切に思い、描く作家。本展のコンセプトはこのあたりで出てきています。
横山さんは漫画だけではない広い世界を見ていて、表現方法としての漫画に行き着いた人です。基本的には現代美術のアーティストといっていいと思いますが、横山さんは現代美術だからとか何だとかいうこともなく、普通に漫画の世界で勝負している。いつもその気概に打たれますね。そんな横山さんの作品は、本来漫画が持っている表現力に気付かせてもくれます。漫画とかアートとかデザインとかいった領域を自然に超える力がある、すごく重要な作家と思っています。そんな横山さんの魅力を伝えられる展覧会を作りたいと思っています。(談)(学芸員 金澤韻)
《横山裕一インタビュー》
― 漫画を描きはじめたきっかけを教えてください。
横山 最初は美大で油絵を学んでいたんですよ。でも、だんだん油絵は日本の住環境に合ってないと思いはじめて。それに画材も高いし、描いたもののために仕事場が狭くなってきて・・・。あるとき引越しをしなければならなくって、それまで11畳くらいの広いところに住んでいたんですが、次は6畳。それでもう大きい作品は難しくなりましたね。小さい作品を考えるようになった。
― わりと経済的見地から考えられた路線変更ですね。
横山 そうです。もうひとつ理由があって、一枚の絵を描くということは、場面一つで完結させなきゃならない。それがどうも物足りなくて。色を使いこなすのが難しいと思っていたこともあり、それで白黒で、いろんな場面を描ける漫画にしてみようかなと思ったんです。漫画なら時間が描けますよね。
― 「漫画家」になった経緯としては異色だと思うのですが。
横山 そうですね。たいてい漫画家の人は漫画が好きで漫画家に憧れて始めることが多いと思うので、珍しいと思いますよ。
― 漫画家としての商業誌デビューはどんな感じだったのでしょうか。
横山 『ニュー土木』に入っている「もてはやし」が「ハピネス」という映画の本に載ったのが最初ですね。最初の頃は出版社へ営業に行っていたんです。当時、月に二回営業に行くって決めていました。イラストの仕事はもらいましたが、漫画は簡単には載せてくれなかった。そんな状態が何年か続いて。今でもとってありますが、営業用のミニ本を作っていたんですよ、コピーしてホチキスで留めたやつ。そのミニ本をイーストプレスの堅田浩二さんが見たらしく、ある時電話してきて、「次の『コミック・キュー』に載せてくれないか」と。それ以来『コミック・キュー』に三回載りまして、それで何年後かに単行本にしましょうということになったんです。単行本が出たのはフランスの出版社のほうが少し早かったんですけどね。
― フランスから出すことになった経緯は?
横山 ブルエールさんというフランスの方が、日本に滞在していたときに『コミック・キュー』を見て、たまたまやっていた展覧会も見に来てくれて。帰国したら夫婦で出版社をつくる、「そこで柔道の本とあなたの本を出したい」と。
― 柔道の本と同時に語られるのが面白いですね。4冊出ているということはそれなりの反響が・・・。
横山 数的にはそれほどでもないらしいですが、次々と4冊出していますからね、評価されているんだと思います。その後アメリカやロシアからも出て・・・。
― 海外の展覧会への出品依頼も多いですね。海外から注目されていますよね。
横山 セリフのないのがいいのではないでしょうか。あと日本人にしか通じない内輪ネタのようなことは描かないのでね・・・。反応を見ると外国人のほうが、僕の意図を汲んでくれているような気がしますね。日本人は「絵が細かい」とか、「話が笑える」とか、そういう反応が多くて、「そんなとこ見てほしいわけじゃないんだけどな」と思ったりすることがあります。
― なるほど。横山さんの漫画は、通常漫画を読むのとは違う体験だと思います。漫画ってこういうもの、という先入観のない人がすんなり読める作品なのかもしれませんね。ご自分の活躍されているフィールドについてはどう考えていますか?
横山 どういうジャンルで自分は何者、というふうには決めたくないと思っています。どんなフィールドでもいいんです。そのとき自分がやることをやれれば。まあ、できれば漢字で表される職業がいいですね。漫画家とか美術家とか。ペインターやイラストレーターやアーティストっていうとちょっと違うように感じますね。
― どんなライフスタイルなのか、知りたいという方が多いと思います。
横山 仕事以外でですか? フリータイムのすべてを漫画にあててますよ。釣りとかボディボードとか旅行には行きますが、基本的には気分転換ですね。
― 作中の音の表現が印象的ですが、音楽は聴くんですか?
横山 寝るときに現代音楽を聴いたりしますが・・・あまり重要じゃないですね。それより、友人との会話を録りためているんですが、それを聴くのが楽しいです。自分が過ごした楽しい時間の思い出を味わっているんですよね。
― 今日も録音されてますよね。
横山 はい。こういうのを聴きながら作業すると楽しいですよ。
― パソコンをお持ちでないそうですが、ポリシーですか。
横山 ポリシーというか合理的な判断からです。持ってる理由がない。高いし・・・30円とかだったら持つかもしれませんけど・・・いや、やっぱり買いませんね。何に使うんですか、あんなもの。使いにくいし。マウスも嫌ですね。漫画だの絵だの描いてる人は一刻も早くゴミ捨て場へ持って行ったほうが、いい絵が描けると思います。
― 今回、美術館での初めての個展になりますね。
横山 僕のこれまでのすべてを見せる展覧会にしたいですね。かなり初期のものから出ます。一番古いのは・・・小学生のときに描いた漫画とか。これは恥ずかしくてあまり見せたくないんですけど…。(終)トラックバック(0)
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