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ARTIST TALK_作家トーク

作家トークNo.9 高橋万里子(2) 「人形を人間のように撮り、人間を人形のように撮って…」

—人形のシリーズのポートレートについてうかがいます。人形は人間とは違うわけですけど、人形は人間のように見せるというわけですか?

高橋:最初の頃は、人形が落ち込んでいるとか怒っているとか、ちょっとパロディになりかけてしまうような、人形に人間の芝居をさせたような写真が多かったんです。結局は、人間を描きたい、人形を撮っているんだけど人間を描きたいというところで撮りました。人形を人間のように撮り、人間を人形のように撮って、合わせて展示したこともあります。そういうゲーム的な要素もあって、どちらが、どちらかにより見えるみたいな形で、写真を撮っていました。

—東京都現代美術館でも高橋さんの作品が見られますけど、こちらには人形のシリーズが入っていますね。

高橋:はい。人形がグラスの中にお風呂のように入っていたりとか、ちょっと不安な要素で表情が出ていたりとかというので部屋を構成していて、通路を通っていくと、母の巨大なポートレートがあります。それは像になりきらないような人間の姿です。母親ですけれども、距離的には人形を撮るのも母親を撮るのもそんなに変わらない、私の中で違いがないのです。

—そこが高橋さんの見方の面白い特徴ですね。基本的には人間だけじゃなくて人形と合わせたりとか、今回の展示もそうなんですけど、植物があって、男性の肖像画があるけど、作家のアプローチとしてはどちらも同じ態度ですよね。

高橋:同じ距離感で撮りたい、扱ってみたいというのがありますね。

—ポートレートの方に行ってみましょうか。実際撮るときは、手持ちで撮られるわけですか?

高橋:はい。三脚とか使わないで、明かりは普通に自分が本を読むときなどに使うスタンドで、下から照らして、首が動くスタンドで、カメラは手持ちで撮ります。

—それで影が上の方に写るんですね。

高橋:そうです。壁は自宅の壁です。いつも同じところを使っています。

—タングステンのライトを使ってらっしゃるのであまり光量が無く、シャッタースピードが早く切れないわけですね。それからピントの方もやはり、その人の顔にしっかり合わせるというか…

高橋:けっこうボカしているんですけど、すごくボカしているのと、そんなにボカしてないのと、撮っている間に何度も何度も行ったり来たりをしてやってます。ピントを合わせたつもりがブレていたりとか、ボケていたりとかあるので、出来あがるまで、どれがどうなるのかなかなかわからないですね。

—かなりの数を撮って、その中から選んでいくという作業ですか。

高橋:そうです。ポーズも付けてもらっています。斜めを向いてもらったり、横を向いてもらったり。洋服もけっこう着替えて撮っています。自分で持ってきてもらった洋服を2・3着着替えてもらったり、モノトーンでお願いしますという指示はしていまして、タンクトップになれるよと言って脱いでもらったりして。結局自分が思っていた服がそんなによくなかったりとか、自分がこの向きで、このポーズでいいかもと思っていたものが、実は面白くなかったということがよくあるので、何パターンかやってみるということをしています。あと、人も、この人はいい感じかもと思っていたりしてもあまり良くなかったりとか、そんなに……と思っていた人が、すごく良かったりとか、意外と視線を固定し続けられる人とか、かなり見続けられる人とか、いろいろと面白い、やってみないとわからないというか──

—としますと、この撮影の中では、高橋さんと写される人がかなりコミュニケーションを取りあっているわけですね。

高橋:表情をこうしてくださいとかは言いません。たとえば、怖い顔をしてくれとか。単純に、こうしてください、向きを変えてください、立て膝になってくださいという動作の指示はお願いしています。

ー僕は高橋さんのポートレートを見ていると、写真の歴史の中でジュリア・マーガレット・キャメロンという写真の歴史の中で最初にすばらしい仕事をした女性の写真家を思い出すんです。その方も、当時は、写真というのは克明に写すのが仕事で、かっこよく人の顔を写すのが使命だと思われていたときに、キャメロン夫人は、40歳台に入ってから写真を始めるんです。キャメロンさんは「私のイメージはこういうイメージだ」と作り始めたのが、ボケボケの写真だったんです。被写体が動いていたりする。だけどそれに対して、批判も多かったんですけど、なんかものすごくリアルな感じがしていていいんじゃないかという意見も出て評判になりました。写真のポートレートの考え方を大きく変えた重要な人なんです。そういう人を思い出すんですね。だから、人の姿を、存在を撮るというときに、はっきり撮るのももちろんあるけど、ザンダーなんかもそうですけどね、そうじゃない別のやり方というのもあって、高橋さんの仕事を見てると、ああ、人間というのはある意味で不安定な部分があるし、曖昧な部分もあるし、そういうものとして写真でとらえられる、そういうひとつの表現の仕方なのだと思いました。

高橋:最初からこのボケた感じで人にはアプローチをしています。自分にとっては、それがいちばんリアルな表現なのです。

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