写真ゲーム
ARTIST TALK_作家トーク
作家トークNo.8 前沢知子(2) 「やっぱり、"見る"ということに関して、問いかけたいなあと…」
ーでは、スライド上映の裏側の壁に4×4のグリッド形に展示されている16枚の写真を見てみましょう。
前沢:こうしてまとめてみると、色の要素も見えてきます。個々の写真が色で繋がって行くこともあるからです。一枚の写真にはそれぞれの見え方があると思うんですね。撮った方の考えがダイレクトに伝わっているかもしれないし、たとえば写真に小さく写っている方が知り合いだとしたら、知り合いを撮っているというふうに見えるかもしれないし、たとえば文字に関心がある方であれば、文字が見えるかもしれないし、いろんな要素があるわけですね。しかも全部現実の要素であると。その中で、今回は、たとえば風景が構成された写真を主に選んで展示してみました。
ー16枚のグリッドのなかで、一つ一つの写真が、単独で見るときとは別の見え方、繋がり方が生まれています。
前沢:そうですね。これが絵画だとすると、人物だけ描いてしまうとか、すごく選択肢の中に意味を、エッセンスを濃縮できるので、さまざまな偶然性に、写ったものと他のものが関連して、意味が違うとか、引きずられるというのはなかなかありえない。それが写真の持っている特性であって、写ったものが、たまたま偶然猫が通ったとか、カラスが通ったとか、知り合いがいたとか、ねらって撮ったものの中にもいろんな要素が入り込む。しかもそれが、すべて現実──であるかもしれない──という前提であるものが写真であって、そうした偶然的な要素も作品の中にとりいれています。
ー前沢さんは、小さな頃は絵画少女というか、絵がお得意だったということで、大学では絵画を専攻されているわけですけど、なぜ写真に魅かれたのでしょうか。絵画についてはかなり追求されていたのですよね?
前沢:そうです。絵画は結構徹底してやりました。絵を描く中で、絵画というよりも、美術とは、芸術とは何なのか、社会における美術とは何なのかということを考え始めました。美術の価値観や本質を見ようとしたら、絵画でも写真でも同じことなのです。現代美術、とりわけコンセプチュアルアートの中で、写真とかメディアに対する問いかけ自身が作品に取り入れられることがよくあるのですが、私もそういう同じ思考ラインに立ってやっているというところです。
16枚のプリント作品の前で解説をする前沢さん
ーところで、「私」シリーズの中に、監視カメラとガードマンを使った作品があります。少しご説明いただけますか。
前沢:「私は見ています」という作品の要素は監視カメラとガードマンさんで、そのガードマンさんは本物のガードマンさんと偽物のガードマンさん。「前沢知子セキュリティ」という架空の会社を作りまして(笑)、綜合警備保障さんから同じ衣装を借りてやってるんですけど、あと、本物の監視カメラと偽物の監視カメラがあって、それで点在している中でモニターがあって、よくよく見たら自分が写っていたと。そういう作品で、見ること──モニターを見ていたと思ったら自分が監視カメラで見られていた──という「私」っていう主体のあり方と、「見られている」という行為に関する問いかけが、ガードマンであったり、監視カメラを用いて作ってみました。その背景にあるのは、監視カメラで犯人が捕まったとか、監視カメラがすごく話題にあがっていた時期がありまして、やっぱり、安易に監視カメラを導入する事態というのがすごく増えたんですね。それは「見る」ということに対する絶対的な信頼ですね。あるいは、監視カメラがあれば、治安が守られるかのような錯覚かもしれませんが。とにかく、現代の生活のなかで私たちは常に見られているわけですからプライバシーの問題ということも含めてやっぱり、「見る」ということに関して、問いかけたいなあと思ったことも背景にあります。


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