写真ゲーム
ARTIST TALK_作家トーク
作家トークNo.6 今義典(1) 「実は一昨年、自分の部屋でひとりで"写真家宣言"をしまして…」
ー今日は、今義典さんをお迎えしてお話しいただきます。今回、3点展示させていただいています。実はこのシリーズ、今回、初めて世の中に公開される作品です。現在、このシリーズをネット上でどんどん展開されているんですけれど、まず、この作品を作ろうと思った動機をお聞かせ下さい──最初の記念すべき作品は「トンネルのある風景」ですね。
巨大なプリントの「トンネルのある風景」2006(右)
今:この作品に至る前までは、インスタレーションや動画の作品を作っていたんですけれど、一枚ものの大きな写真を作りたいなと思ったのです。そのきっかけになったのがこれです。強い動機があったのではなくて、演劇的な手法を用いて、ドラマ仕立てで一枚の絵で完結するドラマを作りたいという気持ちだけで作りました。
ー今さんのお仕事をご存じの方はたくさんいらっしゃると思います。かつて、写真新世紀で華々しく脚光を浴びられましたから。その後ドイツのデュッセルドルフ美術アカデミーに行かれまして、あのベッヒャーの下で勉強されました。日本人で初のベッヒャークラスの生徒になられました。その後、アカデミーでイェテローヴァさんの下で勉強されたり、いろいろと方向性を探って、ひとつはインスタレーション的な展示、イェテローヴァさんは彫刻家でしたよね。空間の中に写真・映像を入れ込んでいくといった類のものを作っていらっしゃった。それともうひとつは、動画ですね。ビデオを編集して作り込んだ作品があります。「ジャンパー」という傑作です。市民ミュージアムで2000年に上映させてもらいました。つまり、インスタレーションや動画の作品から、ある意味で原点回帰ではないかといえる、写真の作品に戻ってきたのではないかという感じがするんですけど──
今:実は一昨年、自分の部屋でひとりで「写真家宣言」をしまして(笑)、伝えたい想いが希薄だったのか、作品の様式ばかりが先に立ち、「写真」であることの意味を問いただせないままでした。その時期が結構長かったような気がします。はっきりした答えが出ないまま、映像をやったりインスタレーションをやったり…非常に不埒な時代と決別するために、一枚の写真でバンッとやっていこうかなという思いに至ったのが2006年頃なんです。だからある意味、ルーキーみたいな感じなんです。それこそ気を一新した一年生みたいな感じで、いま何をやっても写真作品をつくるが楽しいんですよ。
ー先ほど今さんもおっしゃいましたけど、一枚の写真のドラマというのかな、そこに見る人は吸い込まれていって、よく見てみると、たとえばタクシーのナンバープレートを見て「なんだこれは?」と(笑)。「加留間(カルマ)」と書いてあるんですね。で、ナンバーが「44(死死)」だったりするんです。ちょっとクスッと笑ったりしてどんどん引き込まれていく。シリアスな場面のようであるけど、笑ってしまう要素が見えるんですけど、そういうストーリーは、絵と一緒に作っていくんですか?
今:まず、こういうのを作りたいなというコンセプトが先にあるんですけど、作り始めていくとコンセプトがずれてきたりとか、物語のテーマが変わってきたりして……というのも、自分の中で楽しんでやっているんですね。こういう状態で出てきたものに対して、そこからストーリーを付けていくというのも、もちろん自分の中では有りだと思っているんです。とりあえず、この作品の解説文を紹介しましょうか。
旧道を抜けるとトンネルがあった
そこには見覚えのある女が立っていた
たとえば最愛の人に死なれたとします。それは恋人でも家族でも誰でもいいんですけど、そういう人が眼前に立ち現れたとき、あなたならどうしますか?という投げかけをしたんですね。人間じゃないんだけど、自分がかつて愛した人がポンと出てきたときに、僕らはどういうリアクションをするのか、「カルマ」ナンバーの運転手──あなた自身っていうような光景ですね。今、言葉に出してスラスラと答えを言えたんですけども、言語化できないドロンとしたものが自分の中にあって、それを試行錯誤してデッサンして絵を作って、これを作らないと言葉が出てこないという前後関係ですね。
ーなるほど。最初にドラマがあってそれに絵をあわせていくという形ではもちろんないし、双方向の作業であると。ただできあがってくるドラマというのが、テレビとか映画のような一貫したストーリーのあるドラマじゃなくて、見る人が作っていくというか、その起点となるような、終点となるようなイメージではないかと、僕は受け止めましたけど。いろんな物語を想定しているわけですよね。たとえば幽霊じゃないかなと思ったりするわけですよ。女性が手を挙げたのでタクシーに乗せて、しばらく走ってその後振り向いたら誰もいなかった、シートだけが濡れていたみたいな、いろんな物語が発生してくるわけです。


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