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作家トークNo.4 三田村光土里(1)「ちょっとスパイじみた、推理小説っぽい"舞台"というか、ドラマそのものを…」

ー作家の三田村光土里さんです。よろしくお願いいたします。早速、今回の展覧会の作品について、お話しいただければと思うんですけど──今回は、「遠くに住んでいる人からの伝言 2005〜2006」という作品を展示させていただいています。

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三田村さんの展示空間 撮影: 三田村光土里

三田村:とりあえず感想から自分なりに。今回の展示はやってみてよかったなと思っています。この作品を作った頃の「寒さ」が伝わるシーズンにやれたんで、そのタイミングとしても冬でよかったという感想があります。作品を作った経緯は、フィンランドに行く前に、作品の舞台というか、プロジェクトの舞台に、「古書一路」という古本屋さんがありまして、そこでなにか作品ができないかどうか話をもらったのです。私自身はほぼ古本しか読まない人で、というのは新書を本屋さんで買おうと思うと何を買っていいのかわからないです。平積みになっているんで。目的を持って買いに行くのがダメなんです。古本屋のワゴンの中から、古本に出会うのが好きで。それを買っては読みということが私の読書のスタイルなんです。作品の内容はごらんの通り、手書きの手紙と、フィンランドで撮った夏の写真を半分に切って、それぞれを栞にして、フィンランドから私が手紙を出した人たちに送られる。それに、古本の中のワンフレーズをメッセージとして、指定した古本屋を訪ねその本が渡される。ちょっとスパイじみた、推理小説っぽい「舞台」というか、ドラマそのものを、作品に関わる人が体験というか、ひとりひとりが体験できるドラマがそこで生まれたらいいなということで、こういう実際の栞を使った伝言を伝えたら本が渡されて、その本に運んだメッセージが書かれていて、さらに本の中にはメッセージが書かれた栞が入っている。その二つの栞を組み合わせると、たとえば夏のフィンランドの景色が──そういう形式をとっています。

mita06.jpg 左: 封筒、手書きの手紙、栞、古本など 右: 書き損じの手紙を束ねたものと三本のボールペン


ー展示されているものを少し細かく見てみましょうか。

三田村:(ケース内に展示されている自筆の手紙を指して)
これは全部手書きで書いた手紙なんですが、もちろん日本語で書いています。フィンランドはフィンランド語を使っていて、私はその言葉が全くわからないし、日本語で手紙を書けることが私にとってすごく重要で、うれしくて、それが人に言語として伝わるということが、うれしいなと思えたんで、とにかく自分の「作品」というには形があまりないもので、とにかく自分で手書きで書こうということで手書きで書いています。全然最近、手で書かないじゃないですか。字を間違えないように書こうとしたんですが、もともと間違えやすい人なんで(笑)、書き損じがあるんですが、3ページの手紙を、写真も含めて4ページの手紙を30人の人に書いたんですけど、実際それと同じくらいの枚数の書き損じができてしまって、ボールペンも3本空になっちゃったっていうことだったので、書き損じもひとつの記念として、ひとつの作品として、ケースに展示してみたんですけど……

ーボールペンを3本空にするといったら相当書かないと減りませんよね。

三田村:あんまりないですよね。だいたい私は無駄遣い派で、小学校から鉛筆もボールペンも使い切ったことがない人なんで、ちょっとすごい達成感をこのボールペンを見て感じました(笑)。ビデオも、3本くらい撮り、一緒に展示しています。写真は、フィンランドにいる間に、ちょこちょこと撮った、冬の空気を感じてもらおうかなというもので、暑さがどこにもない、寒さというものを、ちょこちょこと手紙を書いてたときのアパートの周りにある、すぐ近くに海があるんですね。ヘルシンキって海沿いなんですね。歩いてから3分くらいのところに海がある、その海が、手紙を書いている一週間くらいの間に凍ってくるんですね。ちょこちょことだんだん、薄氷が張って凍っていく海の情景をはさみながら、ビデオも撮ったんです。

ー今回使われている写真なんですけれど、栞に使われてますよね。これはどういう写真ですか……

三田村:これは、夏に現地で展覧会がありまして、そのとき撮った写真を使っています。

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古書一路で手渡される古本とフレーズが出ているページ、そこに挟まれた栞(写真)

ー展示ケースのなかには、栞がひとつ入っていますけど、手紙の中に入れてある写真はどちらの……

三田村:これですね。(写真=栞を指す)

ー古本屋さんに行くと入っている写真の栞は、フレーズの書かれたページに入っていて、栞は二つあると……こういう形になるわけですね。ここで初めて「出会う」というか……

三田村:
そうですね。受け取る人との時間がここで始まるというか……そうですね。

ー気持ちがここで出会うというような感じですよね。そういう意味で三田村さんが展示場のパネルに書かれていましたけれど、どういう気持ちで、もらった方がこの本屋さんに行くのか、そういうところも含めて、この作品を成り立たせていますね。

三田村:実際、受け取った人が、ブログを書いてくれて、その本がすごくその人にとっても思い入れがある本だったらしいんですよ。夏目漱石の本だったんですけど、たまたま。結局その人しか持ち得ない時間が人それぞれあって、そこのところに、私自身も体験できない、関わった人だけが持っているドラマ、時間、空間が生まれるというところが、逆に私も参加する側になりたかったなと(笑)いう気持ちになりました。

ーなるほど。その本のフレーズというのは、この方に書く手紙にはこのフレーズというような、なにかその人を思い浮かべながら選んでいたんですか?

三田村:いえ、全然ないですね。先にもう送る人を選ぶ前に作品の方があって、それをどの人に送ろうかといった感じで選んでいったんですけど、あと、言葉を選ぶときというのは、わーっと見たときにちょっと目に付いた言葉で、ただそれだけで選んだんで、まったく本の中の内容に合わせるようなフレーズって、特にないですね。どちらかというと質問口調のフレーズを選びましたね。

ーブログにはどういう風に書かれていたんですか?

三田村:その人が古書屋に行かれた2006年の1月がとても寒かったらしいんですね。すごく寒かった中その人が古本屋へ行って、自分が忘れていたけれども、若い頃影響を受けた本ともう一度出会うことができて、帰りに一杯飲んで帰ったと書いてありました。逆に私も、読んでいてうれしいというか、かなり感激しました。

(聞き手 当館学芸員 深川雅文)

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