写真ゲーム
ARTIST TALK_作家トーク
作家トークNo.2 石川直樹(1)「シャッターを切るたびに世界が生まれ変わる感覚がある」
若くして七大陸最高峰登頂を成し遂げるなど冒険家として活動を広げていった石川直樹氏は、近年、写真の世界において優れた仕事を世に問いかけています。今回の展示では、昨年発表された大部の写真集『New Dimension』から作品を展示しています。このシリーズで、石川氏は世界の主要な先史時代の壁画のある土地10カ所を取材しました。今回の展覧会では4カ所の作品、91点が展示されています。トークでは、それぞれについて石川氏から写真を見ながらお話ししていただきました。以下、石川氏のトークを元に内容を構成し、石川直樹氏の写真家としての姿に迫ります。[聞き手:当館学芸員 深川雅文]

写真集『New Dimension』の最初を飾る「フゴッペ洞窟の壁画」でこの展覧会も始まる
パタゴニアのシリーズの展示風景
ー先史時代の人々によって描かれた壁画を訪ねる旅から生まれた「NEW DIMENSION」のシリーズを始めるきっかけはどのようなものだったのでしょうか?
「2000年にPole to Pole という、およそ1年弱かけて北極から南極まで人力だけで旅するプロジェクトに日本代表として参加しました。そのとき、アメリカの南部、ニューメキシコ州の小さな山の頂上あたりで古い壁画に出会いました。その絵を見てなんなんだろうこれは?という思いが、もやもやした形で頭の中に残ったんです。その後、北海道にあるフゴッペ洞窟を訪れ、日本で唯一と言われる先史時代の壁画と出会ったのです。その体験を手がかりに、ますます壁画の世界に関心を深めて、世界中に点在する同種の壁画から壁画へと旅してみようと決心しました。」
[展示されている個々のシリーズについての石川氏の説明についてはここでは割愛させていただきます]
ー石川さんは、このシリーズに見られますように、自分の関心になったことをいろいろと調べ、そこから旅を立ち上げてカメラを手にして関心の中心にある場所を撮影し、私たちにその旅を伝えるわけですが、ご自身のなかで写真の位置づけはどのようなものなのでしょうか?
「まずは登山や川下りなどの活動があって、その記録として写真がありました。登山家にしろ冒険家や探検家にせよ、写真とそうした記録行為は切っても切り離せないところがあります。たとえば、単独で山に登った場合、登頂に成功したことを証明するものは、その場で撮影された写真しかないわけです。自分もまずは純粋な記録としての写真からはじまって、20歳頃、写真の専門学校に一年くらい通って本格的に写真の技術的なことを学びました。それ以降、もう少し写真に特化した作品発表を行うようになっていったんです。
カメラを持っていると漠然と歩き続けているよりも、周囲に対してより知覚が鋭敏になって新しい世界と出会えるような気がしています。シャッターを切るたびに世界が生まれ変わるような感覚があって、日本に帰って現像してベタを見直して、写真集や写真展のために順番を考えたり編集したりする作業をとおしてまた新たな世界がそこから立ち上がってくる。僕にとっては一つの旅が深化していって、何度も何度も新しい旅に出ているような感じなんです。今では、写真と自分とは切り離せない関係にあると思います。」


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