写真ゲーム

ARTIST TALK_作家トーク

作家トークNo.1  土屋紳一(1)「自分の目線で地図をつくる」

このコーナーでは「写真ゲーム」展の展示作品と作家の仕事についてトークを元にして報告します。

作家トークNo.1は土屋紳一氏です。

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土屋紳一作品展示風景 撮影: 土屋紳一


土屋紳一の今回の展示作品は、Scan シリーズから5作品(展示風景写真左側)、そしてSurfaceと題されたケルン・ドームの写真と写真で自らの姿を作り上げたShell を組み合わせた作品(同右端)からなる。

まず、Scan シリーズについて紹介しよう。

Scan シリーズは、2006年に発表された(日本では今回が初公開となる)。幅59cm×縦179cmの縦に長いサイズの作品である。この表面に、都市の断片的イメージが数にして50点重ね合わされている。一見、コラージュのように見えるが、実は、システマティックな手続きを経て撮影されたイメージを一定の規則にしたがって重ね合わせている。

その基本的な規則とは、ある都市について、撮影する経度を定め、その経度に沿って南から北へと都市の光景を連続的に撮影するというものである。

たとえば、Scanの最初の作品、「ロンドン」のキャプションには次のように記されている。

Scan

ロンドン
2006
51°30'51.27" North latitude
0°00'00.00"

51°27'07.47" North latitude
0°00'00.00"


ロンドンにはグリニッジ天文台があり、歴史上、地球の緯度経度の起点となった都市である。ここでは、その起点となる経度 0°00'00.00"の位置を確定し、ロンドンを南(51°27'07.47" North latitude)から北(51°30'51.27" North latitude)まで、歩きながら北上して撮影したイメージを、南から北に至までの順番に並べて重ね合わせている。つまり、同一の経度のなかで、都市の光景をスライスするようにしてスキャン(断層)撮影していった軌跡が作品化されているのである。土屋は、この規則に従った撮影を厳密に行うために携帯のGPS装置を用いている。

この一枚の作品に重ね合わせる50点を選び出すために、北上の過程でそれをはるかに上回る写真が撮影されておりそこから選び出され、南から北へという順序にしたがって重ねられている。20世紀に生まれたモダニズム写真のコラージュ作品を彷彿とさせるが、作品の組み立てはルール的に秩序づけられておりそれらとは異なっている。

今回の展示では、5都市の作品が並べられている。
ロンドン→パリ→ブリュッセル→デュッセルドルフ→ベルリン という順である。それぞれの都市も同じルールで撮影され、同じ方法で重ね合わされている。5都市の経度を見てみると(下記、キャプションに記載)、作家はロンドンを起点に東方へと移動しながら撮影していることがわかる。

パリ
2007
48°52'57.66" North latitude
2°20'11.41" East longitude

48°50'03.90" North latitude
2°20'11.41" East longitude

ブリュッセル
2007
50°52'38.46" North latitude
4°21'09.12" East longitude

50°49'23.57" North latitude
4°21'09.12" East longitude

デュッセルドルフ
2006
51°16'29.79" North latitude
6°46'25.64" East longitude

51°12'15.53" North latitude
6°46'25.64" East longitude

ベルリン
2006
52°34'28.95" North latitude
13°22'32.41" East longitude

52°25'32.54" North latitude
13°22'32.41" East longitude

つまり、この5点を合わせて見ると、個々の都市の「地図」的イメージに加えて、土屋のビジョンによって初めて見えてくる、大陸規模での「地図」の面的な広がりが現れてくる。

土屋は、トークのなかで、こう述べた。

「自分の目線で地図を作ることがこの作品で重要でした」

現代のデジタルガジェットを身につけながらカメラを手にし、自分が生み出した撮影のルールに従って都市を北に向かって歩き続け、イメージを採集し構成することによって紡ぎ出される「地」の「図」。それは、公の「地図」とは異なる、自らの思索と身体とが互いに深く結びついた肉体化かつ頭脳化された独自の「地図」なのである。

(文: 当館学芸員 深川雅文)

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