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作家トーク 今義典(3)「まず最初に超えなくちゃいけない人は山田洋次と思っています…」

ー「笑い」といいますか、楽しませることに開眼したということでしょうか?2007年になってさらにこのシリーズが続々と生まれています。たとえば「独りゾンビ」。今回の展示では拝見できませんが、ネットで見ることができます。笑ってしまいますが、ひとりぼっちのゾンビはもの悲しい感じもします……このアイデアはどこから来たのでしょうか? 写されている空間は、行ったことがある人には見ただけでこれはジャスコだなとわかると思いますが…

今:運命的なものでした。僕が妻とジャスコで買い物をしているときでした。「なんか『ゾンビ(映画)』っぽいねここ」という話題になりました。サヴィーニが2階から飛んできそうなシチュエーションだと。だけど、『ゾンビ』だと役者さんがたくさん要るなと。そう言うと、「だったら『独りゾンビ』にすりゃいいじゃない」と(笑)。「Dawn of the Dead」(邦題『ゾンビ』)ではうじゃうじゃいるところに独りでぽつんとゾンビがいるというイメージです。イオンは、民主党の岡田さん(岡田克也衆議院議員)の先代が作り上げたばかでかいお城です。大型店の規制緩和で出来たわけですが、それによっていわゆる昔からある商店街というのがなくなって、お客さんがみんな大型店舗へ流れるようになりました。実は、田舎へ帰ると昔よく遊びに行ったお店がなくなっていて「あれ!?」と、いう感じがあります。昔懐かしいふるさとが変貌していることへの風刺もあったりしますけども、映画の『ゾンビ』を知らない人が見ると、この作品はチンプンカンプンなんじゃないかなと思うんですが、こういう社会的なテーマも実は意識としてはあるのです。おかしいけど、まじめに。

ー「銀ちゃん」もそうですよね。社会的な事象とも関わっています。「17歳」をめぐるさまざまな事件とか。「独りゾンビ」にしても、「ジャスコ/イオン」の異様に巨大な空間が入ってくる。異常な空間だと思うんです。とにかく巨大で、空虚な感じもするという。だから『ゾンビ』を観ていなくてもわかるところもあると思うんです。「ゾンビ」の次は…

今:「FIRST LOVE」(2008)です。

ー先週、1月27日に撮影された最新作ですね。インターネット上でワールドプレミアをされたばかりの「FIRST LOVE」です。今、ネット上で拝見できます。

今:宇多田ヒカルの「First Love」を聴くと僕はものすごく泣けてきちゃいます。新作は、今でこそ旦那さんと結婚して、子供ももうけて幸せな主婦業をやってる人が、中学校時代に本当に好きになった人が女の子だったっていう、せつない、はかなく、一瞬で消えてしまうものを永遠に写真に焼き付けてあげたかったってのです…。

ーまさしく、テーマは「愛」ですね(笑)。まだごらんになってない方もいらっしゃると思うんですけど、ぜひインターネットで今さんのサイトがありますので、そこに公開されておりますので、見ていただければと思います。作品がどんどん広まっていっていますよね。いま全部で8作品ございますが。

今:このまま100点作っていきたいなと思います。

ー写真のおもしろさを、なにか突拍子もない仕方で見せていただいているなという感じがいたします。写真は「真を写す」と書くわけですが、もっと別の楽しみ方というか、豊かな部分があって、今さんの仕事はそのひとつだと思います。笑わせているけど、なにか社会的なものも思い起こさせるし、受け取る人それぞれの受け止め方なんだけど、受け止める人にいろんなイメージを沸き立たせるような「像」あるいは「絵」です。作るときには、「写真を撮る」というのも重要なんですけれど、構図とかの構想にかなりの時間を要するのではないでしょうか?

今:かつて絵をやっていたので、間の置き方、地と図の構図関係とか、はたしてここで切っていいのだろうかとか、絵を見る感じにほんと近いです。もちろん、画像補整とかも部分部分でやっているんです。絵的な解釈からうまくいかないことが多々あります。そのあたりを解決するのに、やはり昔取った杵柄じゃないですけど、絵の勉強がいろいろと役立っていますね。

ーといいますと、まず、絵画の基本技術、写真の技術、そしてデジタルテクノロジーによるイメージメイキングという、そういうのが合体することによってこれらの作品ができているというふうに見てよろしいでしょうか?

今:はい、そうです。

ー写真の中にドラマ性を持ち込むというのが、欧米の作家の中にも結構いらっしゃったかと思うんですけど、たとえばジェフ・ウォールとか、かなり巨大な作品で、有名な絵画の場面をモチーフにしたり、映画にしたり、ああいう作品というのは今さんも見て、いろいろと影響を受けたというのはあるんですか?

今:ジェフ・ウォールは気になる作家のひとりでしたね。演劇的な要素を持ち込んだり、芝居がかったようなドラマ仕立ての写真というのを、もちろん僕の中でも当然意識してありまして。昔はそれこそ、デヴィッド・リンチみたいな前衛的な映画をくまなく観ていたんですけど、さっきも申し上げたとおり、今の僕は「男はつらいよ」とかそういうのばかり観ているんですね。山田洋次。まず最初に超えなくちゃいけない人は山田洋次と思っています。「男はつらいよ」的な、それこそ出来上がっている八作品のひとつ「東京の伯父さん」は、美術や音楽を志して上京して、挫折したりした、そういうしょうもない東京のオジサンに向けての、同士への賛美みたいな面もあります。

ー「東京の伯父さん」は、ネットでご覧いただけます。ぜひ観てください。突拍子もない作品です。山田洋次監督ですか。デヴィッド・リンチではなくて。

今:東京に上京してきた昭和42年生まれの男に対する作品(笑)。そういう意味ではターゲットは限定されるかも。しかし、全員に共感されるよりも、ひとりに大泣きされた方がうれしいです。

ードラマ性を写真の中に引き込んだ作家の作品の流れはすでにあるんですけど、これだけ「お笑い」を真剣に取り込んでいったというのはあまりないですね。海外のひとびとは、どういう風に受け止めるのでしょうか? 海外の笑いの文化にもよるでしょうからどういう反応が生まれるか今後楽しみですね。ありがとうございました。

(聞き手: 当館学芸員 深川雅文)

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